日本に居るときは大の和食党で、朝はご飯に昆布とかつおのだしの効いた味噌汁。昼はパスタをふくむ麺類が主で、夜は牛肉、豚肉、鶏肉は週に一回程度、後は毎日魚で、たいがい刺身、あとは焼き魚やしめ鯖など。たらこにちりめんじゃこがあれば言うことなし。野菜は根菜の煮付けや簡単にゆでて塩とオリーブオイルであえる。その他納豆、豆腐、つけもの、のりと割合、変化のないメニューだが、それぞれがうまいので飽きることはない。もちろん日本酒も。
旅に出るときは、食についてかなり心配した。出発に当たっては、大量の日本食材を持っていった。とくに昆布とかつおぶしはあきれるほど沢山もっていった。しかし、不思議なことに旅先では食べたいものが変わる。
最初は東南アジアのベトナムやマレーシア、カンボジアから回ったのだが、いずれも麺文化の本家で、中華風の食べ物も豊富だ。特に日本食を欲することはなかった。米とうどん(フォー)があるからだろうと思う。
一気にモロッコに飛んだ。ここでは肉はいわずと知れた羊だ。昔、当時の村山首相が訪問先で羊肉がまったくあわなかったことを記憶しているが、私は全く問題なしであった。娘が家で日本食を作ってくれたので、それなりに満たされたのかもしれないが、乾燥した砂漠の風土では、日本食は少々頼りない感じもする。羊肉がからっとしていて、脂っぽくない。炭火で焼いてたまねぎで食うと食欲がどんどんでる。
それに豆の煮た簡単、素朴な料理が驚くほどうまい。トマトも必須の付けあわせだ。土地土地でシンプルな伝統食を食べると、その栄養バランスが整っていることに感心する。肉食民族とか言われるが、決して肉ばかり多量に食べるわけではない。観察していると、穀類、豆類、果実、オリーブオイルと香辛料をバランスよく食べている。
南米アルゼンチンやチリでは牛肉がうまい。シンプルなステーキのうまい店が多かった。塩と胡椒だけで食べる。体がこのような風土に適応してしまうのか肉を要求する。魚は体のことを考えて意識的に食べる。しかし、日本料理店は行かないので刺身は望むべくもない。切り身の焼き魚になるが、ツナステーキなど、やはり肉の代用品と考えている気がする。