アルゼンチンのカラファテに数日滞在したときのこと。昼飯にしっかりしたものが食べたくなった。アルゼンチンといえば牛肉だ。ホテルのお兄さんにレストランを紹介してもらい、出かけた。
カラファテの本通りに出て、すぐにその店は見つかった。テーブルクロスの敷いてある、この町ではNO1の店らしい。磨きたてたワイングラスが光っている。もう少し、町の人たちが利用するようなところがよかったのだが、ホテルで案内するとどうしてもこのような店になる。
腹も減っていたので、他を探す元気もなく、店に入る。ウェイター達もなんだか取り澄ましているように感じる。しかし、ステーキはかなりいけた。南米に来て、初めて旨い肉にめぐり合った。我々の担当ウェイター氏は20歳前後か、英語がわからない。スマイルはなくいわゆる仏頂面だ。その点がやや気になった。
翌日も又その店に行って見た。そうなんです。私達は、気にいると同じ店に通う傾向があります。この日のウェイター氏は英語が話せ、愛想がよい。店の前にアサード(アルゼンチンの炭火焼肉)の設備がある。羊のあばらをそのまま時間をかけて焼く料理(名前を忘れました)に挑戦しようと、オーダーすると今の時間はやっていないとのことだ。しかたなく金網でやいた羊肉にした。
食べ終わった頃、この日のウェイターが昨日の若いウェイターを連れてやってきた。若いウェイター氏は同じく愛想はないが、少し態度が違う。もじもじしている。本日のウェイター氏が英語で、「彼が漢字の名前を書いて欲しいといっているが、お願いできるか」と言ってきた。
彼はサルバトーレという名前だ。「猿葉答礼」ととっさに思いつき、書いた。あまりよい出来ではないが、仕方がない。これしか思いつかなかった。書いてあげるとウェイター氏は顔を少し上気させて、にっこり微笑んだ。
なんだか愛想がよくないと感じたのは、実はシャイなのと、英語がしゃべれないためで、実は可愛げのある、いい奴だったのだ。こんな勘違いが、結構ありました。
メモ:カラファテの名前の由来は、このあたりに見られるブルーベリーによく似た植物からきている。食べてみたが、本当によく似ている。甘酸っぱい。
メモ2:サルバトーレは祝福を受ける人という意味だと薔薇の名前でしった。