バリで出会った人たちには平凡な人生ではない人も多くいた。音楽家が集まるマンションの映画が合ったが、そこにはさまざまな体験を経ての出会いが織りなす人生模様が描かれていた。
バリで出会った人々も10年を経て懐かしく感じるようになってきた、こうなったら書き頃なのだろう、迷惑がかからないようにデフォルメしてフィクションの形で書き留めておきたい。
1.妻子と別れて、あるいは捨ててやってきた男たちも多くいた。G、Mさn。Gさんは妻と息子を日本に置いてやってきた。どうしてもやりたいことがあると言いおいてやってきたが、まあヒッピー的な乗りでやってきたのではないかと思う。息子はプロ野球である程度名を知られる存在になった。Gはさまざまな飲食店を経営してそこそこうまくいっている。従業員に対するわるい噂も少し聞こえてくる。
サヌールの日本料理店に勤めるるMさんもやはりワケありで息子と別れたことを気にしている。妻のことはあまり触れたがらない。
逃げる地としてバリを選んだ男たち、勝ち組を名乗りたくてバリを選んだ男たち、あらたな出会いを求めてバリを選んだ男たちと思いはさまざまだが共通しているのは人生のやり直しを求めていることだ。
2.92歳の男性がプールのなかをゆっくりと歩いている。この老人は元大手の商社マンで鉱山開発を専門とする男だった。当時の花形分野だ。その仕事の一環でパリに滞在し、インドネシアにも長くいた。老人は私が鳴らすシャンソンの「枯れ葉」を唄って追憶にふける。
とある朝の食卓に老人が愛人と朝食をとっていて、食卓には森鴎外の「舞姫」が置いてある。老人はかつてのパリ時代を懐かしい眼で話し出す。パリで出会った女性と恋に落ち、彼女は日本まで追いかけてきたのだが結局は男が応えることが出来ずに淋しくパリに帰っていったという。少し話に酔っているのではないかとの想いがよぎらないことは無いのだが、老人にやや批判的な目を向けるとすぐさまその気配を感じ取ったらしく、パリジェンヌの来日で自分の家庭も壊れてしまったと、自らも犠牲を払ったことをぼそりと述べる。
離婚はしていないがもう何十年も家族とは別居生活が続いていると言う。隣に30歳年下の愛人が座っていて話を聞いている。その後老人のバリ訪問が2年途絶えた。ホテルのオーナーに事情を聞くとその年に長野県の山荘で30歳年下の愛人に看取られて亡くなったとのことだ。
3.エクアドルで柔道を教えていた老人はバリでも柔道を教えている。何かの事情があるのだろう、息子の子供を引き取り老人夫妻で孫を世話している。息子は10歳で厳しい祖母の監視のもとで育っているせいか、ときどきプールで泳ぎながら奇声を上げるのでストレスが多いのだろう。老人夫妻の教育が厳しすぎるのだろうかこの子は大人の目を気にしすぎるところがあり、不憫になる。
老人は毎日道場まで柔道を教えに行く。バリで2番めに強い柔道家だと送り迎えの運転手兼弟子の若い男が私に言う。相当な老齢で70代後半だろうか、額面通りバリで2番めに強いはずはなく、恐らく柔道の段位のことを言っているらしい。若い頃はさぞかし強かったのだろうと思わせる風貌をしているが既に心臓手術も受けた身であり、プールからサイドに身を持ち上げるのに時間がかかり大変そうで、みているのが辛いほどだ。これは筋肉の衰えもあるのだが、体のひねりがうまくいかないことが主な理由だ。
4. 娘がジャマイカの男性との間にもうけた二人の娘を育てる祖母。
5. ジャワの奥さんとの間に男の子をもうけて暮らす初老の男性。
6. それまでの人生を捨てるかのように家族を捨てて女性とバリにすむ70過ぎの男が隣に住んでいた。週一で行うインドネシア語学習会の折に階段をすべり落ちて頭を打ち、それから体がみるみる衰える。
7. 野良猫を数匹従えて歩くオランダ人男性、背が高いので小さな猫とのコントラストが面白い。ヤシの房が落下して頭に傷を負い、頭に包帯をまいている。
8.バリの街をひたすら歩くオランダ人夫婦。とにかくどこでも憑かれたように一心不乱に歩いている。オランダで歩けばいいのにと余計なおせっかいまで考えてしまう。
9.NTT社員で騙されたと各部屋にビラを配る男。バリ在住の日本人から日本での買い物を頼まれて金を預かり、表にでたところでひったくりにあった男がこのバリ在住の日本人がひったくりとグルだとして怒りのビラを一軒一軒撒いていた。一体どちらの言い分が正しいのかわからない。
10.海賊と戦った武勇伝を語るドイツ人がいた。
11 バリ夫からDVを受ける日本人妻。
12 金持ちのパトロンを見つけに来る女たち
13 預言者シシ ジュセリーノ
14 バッグ屋の親父の回顧談 ダヤックの名刀がバリの刀名人の手によって蘇る。
15 バリ シシに聞く犯罪事情 催眠術強盗 トランプ詐欺 アームカッティングが語るもの 家政婦の受難 かつて聞いたひどい話がニュースに
16 カフェでのよもやま話 前世 生誕の終末は死なり。死の終末は生誕なり。法はかくの如し
17 女は水田に足をいれてはならない 相撲界と同じか
18 鳥を欲しがるアユ マッサージ この至福はバリに住む醍醐味ではなかろうか 原色の鳥が目前をよぎった 早朝6時前のサヌール バリ 日曜日の朝には ついに撮影した 赤い鳥 赤い鳥が長居を
19 眼前をシラサギが グンカンドリが飛来 グンカンドリを再度撮る バリ島で鷲を目撃 ついにカワセミを撮る 初めて見るペリカンの飛来
20 5年間のバリ滞在で初めてカラスを見る
21 ビラ賃貸 日本人に約束を破られる
22 減耗控除」から「枯葉」まで 森鴎外 「舞姫」を読む
23 屋上から見た風景 不思議なヒンドゥ神の恩寵
24 沈黙の声を聴く スウェーデンの森に住む人の話 アル中克服 身辺を嗅ぎ回るオランダ人を嫌う 屋台であった老人 レベル5以上の事故
25 鈴のスタッフ 父がリンチで殺される
26 ジゴロとの会話 卵10個 年に2回 会社社長