瀬戸内海に面した小さな町瀬戸田に平山郁夫美術館があることを全く知らなかった。館に入り収蔵の品である「求法高僧東帰図」をみた。天竺に経文を求め中国に帰る僧を描いている。例外なく老いて痩せている。疲労の蓄積の為に前のめりに足を引きずるように歩いている。現代風な希望に輝く表情ではない。飢えと疲労を祈りで克服しながら歩いているようだ。しかし僧たちの周りには清浄の気が満ちている。
描かれた世界に入り込み求法の旅を想像してみた。そして求法のために長い苦難の道のりを歩くという情熱の燃やし方があった時代を思った。
今の世はこうした情熱のありようからはるかに遠い所に来てしまったことを再認識した。平山郁夫の作品を通じてこうした情熱の片鱗を感じ取ることができるのは貴重だ。