相変わらず梅原猛「法然の悲しみ」下巻を読んでいるがなかなか読了にまでは至らない。原文の引用が多いのと登場人物が多岐に渡り頭に入れながら読み進めるがなかなか進まない。一日に10ページくらいか。でもまあこれでいいのだろう。早く読むことでいいことは別になさそうだ。
法然の弟子の一人に熊谷直実がいる。戦いの最中に自分の息子と同年代の17,8歳の紅顔の落ち武者の首を打ち、後に無情を感じて出家し法然の弟子になったという。その熊谷直実についての本書の説明の中で、彼は一時大庭景親に従って源頼朝と石橋山で戦い、頼朝を打ち破ったとある。大庭景親は今の藤沢一帯を支配していた平家側の武将だ。熊谷直実はそのとき戦った有力武将の一人であった。
平安時代の政権の移り変わりは頭に何回入れようと思っても記憶はすぐに霞んでしまう。単純に源がつくから源氏側で平がつくから平家側ということにはならない。保元の乱で源氏が勝ち平治の乱で源氏が没落し、平氏が興隆する。今度は源頼朝の挙兵で平氏は没落し源氏の天下となる。あわただしい変転でとても歴史上の人物と立場まではとても覚えきらない。
法然はこのあたりの時代に活躍している。従って「法然の悲しみ」を読み進めるためには源平の盛衰と当時の主な人物模様もある程度理解せざるを得ないのだがなかなか大変だ。そんな中でなにかしら縁のある名前に出会うと記憶のとっかかりができたようで大変嬉しい。
大庭景親はその末裔の大庭さんと仕事上で知り合ったのでその方の風貌などを想い浮かべると歴史が身近に迫ってくるように思う。又頼朝が石橋山の戦いで敗走して安房の国に逃れ、千葉常胤らと軍勢を整えて鎌倉に進軍するとある。これまた一時ケーブルテレビ会社にいた頃に仕事で顔を見知っている 千葉滋胤さんを思い浮かべることができる。名前からしていかにも千葉常胤の末裔らしい。現代に生きる彼らに歴史上の人物はおそらく全く関心がないと思うのだがこちらは勝手に記憶のよすがにさせてもらっている。
先月に訪れた京都・嵯峨の二尊院及び清涼寺も法然ゆかりの寺と知って訪れたわけではない。全くの偶然なのだが、「法然の悲しみ」にたびたび登場する寺院であり知人の姓ではないがこれまたその寺院の記憶を呼び覚ますだけで、本書を読み進める上での助けになっている。
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