ソフトバンク及びスプリントは今後、競争上の懸念から通信業界の合併に反対の姿勢を示してきた米当局の審査に直面することになる。
非関税障壁(ひかんぜいしょうへき)とは関税以外の方法によって貿易を制限すること。または、その制限の解除要件のことである。非関税措置と呼ぶこともある。
具体的には、輸入に対して数量制限・課徴金を課す、輸入時に煩雑な手続きや検査を要求する事。または国内生産に対して助成金などの保護を与える事などによって行われる。
また拡大解釈的には、輸出入に不平等な結果をもたらす、国特有の社会制度や経済構造を含む場合がある。 by wiki
非関税障壁ではないが、その基本にある考え方からすれば資本の参入障壁も同等であり、この点からもTモバイルの買収は認められるべきである。
過去には米国は日本に対して以下のような強い要求を通してきた。
<1989年4月27日 米国がモトローラ方式に携帯周波数を割り当て要求で日米政府協議が決裂>
この日、モトローラ方式の日本国内採用を巡って自動車電話の周波数割り当てに関する日米政府協議が決裂した。1986年の交渉では小森郵政省事務次官の活躍がメディアに喧伝されていたが1989年の日米交渉では奥山次官が交渉の任にあたり、政府は小沢官房副長官を送り込んだ。しかし4月28日に米国政府は日本の通信市場の閉鎖性に対して制裁措置実施を発表。6月28日にはモトローラ方式を巡る日米通信交渉で、首都圏でもNTTとモトローラ2方式を採用することで決着した。
郵政省はIDOに首都圏で一部TACS方式(モトローラ方式)を運営させる。5月30日にはIDOが携帯電話サービスを開始したがモトローラ方式も新たに併用し、基地局増設と周波数の変更のため、数百億円の新規投資を強いられることになる。
モトローラ方式をめぐる日米交渉はさらに詳しくみると下記の推移になる。日本が通信政策に関して米国に対してここまで要求したことはない。無理筋の対日要求として歴史の教訓とすべきだ。
①1986年MOSS協議の結果、自動車電話にNTT以外の新規事業者の参入が決まる。京セラ系のDDIと、トヨタ、道路公団系のIDOが参入を表明。DDIはTACS方式、IDOはNTT方式。郵政省はIDOに首都圏、中部圏、DDIに関西圏を10メガヘルツ割り当てたのに対して、アメリカ政府が非関税障壁と批判し、郵政省はDDIに首都圏以外の東日本を割当。
②1989年 モトローラが既にMOSS協議が決着していたにもかかわらず、首都圏でもTACS方式への割当を求める。当初はMOSS合意違反に名を借りたゴリ押しだとの認識を持っていた郵政省は結局圧力に屈してIDOに首都圏で一部TACS方式を運営させる。政府間事務レベル交渉がワシントンで行われ首相特使の小沢前官房副長官、奥山次官、米通商代表部のヒルズ女史との協議は米国側に押し切られたことになる。
③1994年 米政府はモトローラ製品だけが伸び悩んでいるとしてIDOに割り当てられている周波数のうちモトローラ方式を増やし、基地局を増設することを要求し実現した。
さてソフトバンクは米国スプリントを買収して米国でベライゾンとAT&Tを追い上げることになるが、Tモバイル買収障壁に対して、この当時の米国のような強い要求を日本やソフトバンクは行うことができるのだろうか。このモトローラ協議を過去の好例としてソフトバンクは対FCC協議に用いるべきではないか。
モトローラの例では米国政府(米通商代表部)のヒルズ女史を先頭に立てての交渉であった。ソフトバンクも総理官邸・総務省・経産省を前面に出した交渉方法を考えるべきではなかろうか。