バリ人の凧好きは一度この地を訪れた人ならだれでも知っている。今頃は風がかなり強いので凧を上げて遊ぶ姿が至る所で見られる。
白い凧が高い樹木の上に引っかかって身動きが取れなくなっている。風が吹く度に少し舞い上がるが糸がからめられているだけにどうしようもなく絡め捕られたままだ。トラップにかかったキツネがもがきながら徐々に勢いを失っていくように凧も次第に糸が枝に絡まり、身動きが小さくなっていく。
鳩が屋上の手すりに一羽止まっている。左からもう一羽が飛んできて横にとまり、羽を少しふくらましてダンスを始める。もとの鳩は1メートル離れたところに離れる。さらに追う。するともとからいた鳩はさっと飛び去った。残された鳩はきょとんとして眺めていた。こんな会話が聞こえてくるような。
「ねえねえ仲良くしようよ」「わたし、その気じゃないの」「そういわずにさあ」「いやだっていってるでしょう」パタパタパタと飛び立つ。呆然と見送る。