いま読んでいるウンベルト・エーコの「薔薇の名前」に清貧を巡る以下のようなくだりがある。ダルベーナは奇蹟は神の証明にはならないと言っているだけなのだがキリストの奇蹟を魔術と同等に論じようというのか?」 赦しがたいことだとジローラモは言葉の部分を切り取って神を持ち出して反論する。これって麻生氏を攻撃する論理に似ていないか。
国際舞台に出ても貫禄負けしない重要な政治家をこんな問題でつぶすべきでなはい。
・・・{明白きわまりない奇蹟を起こすことによって、キリストは神であった。・・・ジローラモの台詞
「奇蹟ならば、魔法使いや占い師も起こした」ダルベーナは傲然と言い放った。
「いかにも」ジローラモが反駁した。「ただし魔術を使って。では、きみは、キリストの奇蹟を魔術と同等に論じようというのか?」赦しがたいことだと、憤りの囁き声が会談の場に流れた。}・・・
「薔薇の名前」 東京創元社下巻p140
①・・・{僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。
そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。・・・}
運営がポイントであることをワイマール憲法を例にして言っている。あきらかにナチス否定である。
・・・中略・・・
②・・・{しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。
そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。
ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。}・・・
・・・中略・・・
③・・・{僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。
昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。}・・・
確かにわが国のマスコミの無責任なあおりすぎが原因の一つになっていると思う。常にあおりさえすれば一定部数は売れるのだろうが、国際間の利害をあまりにも度外視していないか。
④・・・{憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。}・・・
問題の個所 確かに例示はふさわしくないが①からナチスに否定的なのは自明であり、③と同様の事情でマスコミはこの片言に飛びついたのだろう。これも前後関係から静かに変わったという点のみを例示しようとしており、聞き逃すことが出来る許容範囲であると思うのだが。