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今日は特別な日 長田 弘氏の詩の引用です。いつ読んでも素晴らしい。
「一日の終わりの詩集」 長田 弘 -微笑だけ-より部分を抜粋
街で、友人を見かけたのは、その日だった。
幼い日の表情をのこした、懐かしい友人。
長い間会っていないのに、すぐにわかった。
名を呼ぼうとしたとき、人込みにまぎれて
遠い友人の姿は、すでに消えていた。
そのとき、思い出した。
もうとうに、友人は世を去っていた。
微笑だけがのこっていた。
キンモクセイの花の匂いがした。
秋の日の終わり、たましいに
油を差すために、濃いコーヒーをすする。
そのとき気づいた。そこに彼女がいた。
うつくしい長い指をもったチェロ弾き。
長い間会っていないのに、すぐにわかった。
声をかけようとして、思いだした。
もうとうに、彼女は世を去っていた。
微笑だけがのこっていた。
弦のしずかな響きがひろがってきた。
微笑だけ。ほかには無い。
この世にひとが遺せるものは。
長田弘 追悼 - 団塊亭日常 - Gooブログ
「黙されたことば」 音楽家の人生 - 団塊亭日常 - Gooブログ
残せるものが何も無い私でも、この詩のように、微笑だけは残せるような心でいたいと思いました。
素敵な詩をありがとうございました。
私こそ残せるものは何にもありませんので怒られそうです。(笑)