「サライ」とはキャラバンの小さな宿、オアシス、家、故郷を意味し、この歌ではふるさとの事だ。この歌を聞くと真っ先に汽車を思い浮かべる、15歳で大阪から詫間に向かった夜行列車はSLで、心細さと期待で一睡もしなかった。確か早朝に岡山県玉野市の宇野駅に到着し宇高連絡船に乗り換え高松に着く。
それから鈍行列車に何時間乗っただろうか、ようやく詫間まで着いてさらにバスで一時間も乗った気がする。「遠い夢 すてきれずに 故郷をすてた」ほどの思いは多分にあったのだろう、詫間駅は鄙びた「穏やかな 春の陽射しが ゆれる 小さな駅舎」だった。まさに「別離より 悲しみより憧憬はつよく淋しさと 背中あわせの ひとりきりの 旅立ち」だった。
詫間の門から桜が迎えてくれた。「サクラ吹雪の サライの空は哀しい程 青く澄んで 胸が震えた」
作詞:谷村新司/作曲:弾厚作(加山雄三)
遠い夢 すてきれずに 故郷をすてた
穏やかな 春の陽射しが ゆれる 小さな駅舎
別離より 悲しみより
憧憬はつよく
淋しさと 背中あわせの ひとりきりの 旅立ち
動き始めた 汽車の窓辺を
流れてゆく 景色だけを じっと見ていた
サクラ吹雪の サライの空は
哀しい程 青く澄んで 胸が震えた
恋をして 恋に破れ 眠れずに過ごす
アパートの 窓ガラス越し 見てた 夜空の星
この街で 夢追うなら もう少し強く
ならなけりゃ 時の流れに 負けてしまいそうで
動き始めた 朝の街角
人の群れに 埋もれながら 空を見上げた
サクラ吹雪の サライの空へ
流れてゆく 白い雲に 胸が震えた
離れれば 離れる程 なおさらにつのる
この想い 忘れられずに ひらく 古いアルバム
若い日の 父と母に 包まれて過ぎた
やわらかな 日々の暮らしを なぞりながら生きる
https://www.youtube.com/watch?v=-hrndTxSdkAよりショットで。