まさおレポート

当ブログへようこそ。広範囲を記事にしていますので右欄のカテゴリー分類から入ると関連記事へのアクセスに便利です。 

夏目漱石 草枕 喜びの深きとき憂いよいよ深く、楽みの大いなるほど苦しみも大きい。

2010-01-23 | 小説 音楽

以下『』内は青空文庫より抜粋・引用しています。

『智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。』

情に棹させば流される・・・各種試験でよく意味を問われるので有名だが。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る・・・現在バリ滞在だが、やはり多少の煩わしいこともたまにはある。

『越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容にて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。』

ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る・・・映画も音楽もそうだが、やはり「詩人」『画家」というのは、その言葉自体で既に「小説家」や「音楽家」「監督」などの言葉より一層根源的な響きがある。

『世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。三十の今日はこう思うている。――喜びの深きとき憂いよいよ深く、楽みの大いなるほど苦しみも大きい。これを切り放そうとすると身が持てぬ』

喜びの深きとき憂いよいよ深く・・・どんな体験と読書が漱石をしてこのような思いを抱かせたのか。一般論としてはわかるが、なにか切実な体験の裏付けがあるのかしらと。

『金は大事だ、大事なものが殖えれば寝る間も心配だろう。恋はうれしい、嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。閣僚の肩は数百万人の足を支えている。背中は重い天下がおぶさっている。うまい物も食わねば惜しい。少し食えば飽足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ。』

前段の疑問は、つまりこういうことか。やはり一般論か。

『うれしい事に東洋の詩歌はそこを解脱したのがある。採菊東籬下、悠然見南山。ただそれぎりの裏に暑苦しい世の中をまるで忘れた光景が出てくる。』

『余は固より詩人を職業にしておらんから、王維や淵明の境界を今の世に布教して広げようと云う心掛も何もない。ただ自分にはこう云う感興が演芸会よりも舞踏会よりも薬になるように思われる。ファウストよりも、ハムレットよりもありがたく考えられる。』

『レオナルド・ダ・ヴィンチが弟子に告げた言に、あの鐘の音を聞け、鐘は一つだが、音はどうとも聞かれるとある。』


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。