まさおレポート

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アッシャー家の崩壊 エドガー・・アラン・ポー 読書メモ

2010-01-21 | 小説 音楽
以下、青空文庫よりの抜粋・引用。
『知覚力のあることの証拠は――彼の言うところでは(そしてそれを聞いたとき私はぎょっとしたが)、水や壁のあたりにそれらのもの独得の雰囲気(ふんいき)がだんだんに、しかし確実に凝縮していることのなかに認められる、というのであった。その結果は、幾世紀ものあいだに、彼の一家の運命を形成し、また彼をいま私が見るような彼――つまり現在の彼のようにしてしまったあの無言ではあるが、しつこい恐ろしい影響となってあらわれているのだ』

建物や風景に意志や知覚力があるという文を始めて読んだ。

『我々のすぐ周囲のあらゆる地上の物象だけでなく、騒ぎたっている雲の巨大な塊の下面までが、屋敷のまわりに垂れこめてそれを包んでいる、ほのかに明るい、はっきりと見えるガスの蒸発気の奇怪な光のなかに輝いているのであった。

『ここに入る者は勝利者たりしもの。この竜を殺す者はこの楯を得む。ここにおいてかエセルレッドは鎚矛を振り上げ、竜の頭上めがけて打ちおろしければ、竜は彼の前にうち倒れ、毒ある息を吐きあげて、恐ろしくもまた鋭き叫び声をあげたるが、その突き刺すばかりの響きには、さすがのエセルレッドも両手もて耳を塞(ふさ)ぎたるほどにて、かかる恐ろしき声はかつて世に聞きたることもなかりき「かくて今や竜の恐ろしき怒りをまぬかれたる戦士は、かの真鍮の楯を思い浮べ、そが上にしるされたる妖術(ようじゅつ)を解かんとて、竜の骸(むくろ)を道より押しのけ、勇を鼓して館(やかた)の白銀の床を踏み、楯のかかれる壁へ近づきけるに、楯はまことに彼の来たり取るを待たずして、そが足もとの白銀の床の上に、いとも大いなる恐ろしく鳴りひびく音をたてて落ち来たりぬ』

欧米人の竜に対する感覚、イメージがこの文から明快に伺える。

『まるでほんとうに真鍮の楯がそのとき銀の床の上に轟然(ごうぜん)と落ちたかのように――はっきりした、うつろな、金属性の、鏘然(そうぜん)たる、しかし明らかになにか押し包んだような反響が聞えたのだ。私はまったく度胆(どぎも)をぬかれて跳び上がった。』

小説中の小説の内容と、小説中の出来事が同期している。このようなテクニックはネバーエンディングストーリーでも経験したことだが。



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