「天文学者の説によれば、ヘラクレス星群を発した光は我我の地球へ達するのに三万六千年を要するそうである。が、ヘラクレス星群と雖いえども、永久に輝いていることは出来ない。何時か一度は冷灰のように、美しい光を失ってしまう。のみならず死は何処へ行っても常に生を孕はらんでいる。光を失ったヘラクレス星群も無辺の天をさまよう内に、都合の好い機会を得さえすれば、一団の星雲と変化するであろう。そうすれば又新しい星は続々と其処に生まれるのである。」
今から90年前の作家の宇宙に関する見識は、現代のそれと本質的に変わらないことに驚く。
あえて違いを言えば、冷灰のように燃えつきたイメージを持っていたようだが、下記の説明のように超新星爆発を起こすという点がその後の宇宙天文学で新たな知識として加わったところか。
「質量が太陽の3倍以上の重い星は、赤色巨星の段階のあと自分自身の重力で星全体がつぶれ、超新星爆発を起こして散りぢりになってしまいます。このときの明るさは太陽の数億倍から、ときには1,000億倍にもなります。そのため、夜空に新しく明るい星が突然生まれたように見えます。超新星爆発を起こす星のなかでも質量の大きいものは、爆発のあとに中性子星(パルサー)やブラックホールを残すものもあります。また、飛び散ったガスやちりは、ふたたび新たな星を生み出すための材料となります」http://www.weblio.jp/content/%E6%98%9F%E3%81%AE%E4%B8%80%E7%94%9F
「わたしはこれを修正すべき理智の存在を否みはしない。同時に又百般の人事を統すべる「偶然」の存在も認めるものである。が、あらゆる熱情は理性の存在を忘れ易い。「偶然」は云わば神意である。すると我我の自己欺瞞は世界の歴史を左右すべき、最も永久な力かも知れない。つまり二千余年の歴史は眇びょうたる一クレオパトラの鼻の如何に依よったのではない。寧むしろ地上に遍満した我我の愚昧ぐまいに依ったのである。哂わらうべき、――しかし壮厳な我我の愚昧に依ったのである。」
偶然はいわば神意である。なるほど恋に落ちることも偶然ととらえた訳だ。しかしこれは必然と言う気もするが。「我々の愚妹によった」というのも一寸違う気がする。いずれにしても「偶然は神意」は言い得て妙。
今から90年前の作家の宇宙に関する見識は、現代のそれと本質的に変わらないことに驚く。
あえて違いを言えば、冷灰のように燃えつきたイメージを持っていたようだが、下記の説明のように超新星爆発を起こすという点がその後の宇宙天文学で新たな知識として加わったところか。
「質量が太陽の3倍以上の重い星は、赤色巨星の段階のあと自分自身の重力で星全体がつぶれ、超新星爆発を起こして散りぢりになってしまいます。このときの明るさは太陽の数億倍から、ときには1,000億倍にもなります。そのため、夜空に新しく明るい星が突然生まれたように見えます。超新星爆発を起こす星のなかでも質量の大きいものは、爆発のあとに中性子星(パルサー)やブラックホールを残すものもあります。また、飛び散ったガスやちりは、ふたたび新たな星を生み出すための材料となります」http://www.weblio.jp/content/%E6%98%9F%E3%81%AE%E4%B8%80%E7%94%9F
「わたしはこれを修正すべき理智の存在を否みはしない。同時に又百般の人事を統すべる「偶然」の存在も認めるものである。が、あらゆる熱情は理性の存在を忘れ易い。「偶然」は云わば神意である。すると我我の自己欺瞞は世界の歴史を左右すべき、最も永久な力かも知れない。つまり二千余年の歴史は眇びょうたる一クレオパトラの鼻の如何に依よったのではない。寧むしろ地上に遍満した我我の愚昧ぐまいに依ったのである。哂わらうべき、――しかし壮厳な我我の愚昧に依ったのである。」
偶然はいわば神意である。なるほど恋に落ちることも偶然ととらえた訳だ。しかしこれは必然と言う気もするが。「我々の愚妹によった」というのも一寸違う気がする。いずれにしても「偶然は神意」は言い得て妙。