大柄のドイツ人が小さなプールで泳いでいる。泳いでいると言うより浸かっているといったほうが適切か。目をつむり、ときおり沈んでは浮かび上がり鼻を大きな音を立ててかむ。2メートル近い長身に優に130キロ以上はあろうかという巨体はカバの遊泳を思わせる。彼はバリでホテルを経営しており、ホテルのプールで日のほとんどを過ごす。褐色の肌の女を愛すると公言し、いつも2,3人のジャワ女性を侍らせ、自らも日焼けを恐れない。
太陽エネルギーを受けていると生命力が沸き立つという。この男、世界の政治経済情勢をしゃべらせると面白く、かなりの博識と知れるので当然紫外線の害についても知っている筈だが、そんな医学知識よりも古代ゲルマンの太陽信仰(そんなものがあるとしての話だが)にはるかに重きを置いている。70年間飲まず食わずで、毎朝太陽を眺めて(太陽を直視出来るのも凄いが)エネルギーを得るというヨギのニュースとこの男の記憶が結びついた。