陽光を煌めかせた湾の対岸にアグン山が雲間から雄姿を見せている。湾上にはバリ伝統の両脇に竹を吊った舟があちこちに浮かんでいる。浅瀬には三角錐のとんがり帽をかぶった漁師が2人背中合わせになって釣り竿を上げ下げしている。マングローブの葉が縁をかたどる眼前をツバメがひっきりなしに横切り小さな変化を与える。
対岸には煙突や大型ホテルなどが煙ってかすかに見える。時折モーターボートがエンジンの航跡を残して横切る。岸の手前一〇〇メートルほどのポイントでは波が立ち、サーフィンに興じる子供達が見える。これらの「新しいもの」は視界から無視する。すると数百年前から普遍のバリの風景が眼前にある。