まさおレポート

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ニューヨーク州ジェームズ司法長官の訴訟は孫正義氏の未体験ゾーン

2019-06-12 | 日常の風景・ニュース

下記の記事に接して改めて米国シャーマン法(独禁法に相当)の威力と米国ロビー活動の重要性を感じた。合併が両社の契約者全体にとって年間45億ドル(約4800億円)以上の支出増につながる可能性があるとは一体どの程度の影響だろうか、感触を得るためにざっくりとした試算をしてみた。

米国の携帯年間売上高を33.6兆円とした場合に支出増約4800億円は0.014つまり1.4%にあたる。米国の携帯料金を7000円と置くと100円の支出増となる。7000円が7100円になる根拠は一体なんだろうか、約4800億円をどうやって計算をしたのか興味深いがいわば寡占指数である。寡占指数が1.4%アップするとしてニューヨーク州ジェームズ司法長官を先頭に反対している。独占と寡占に非常にセンシティブな国であることが理解できる。

それは歴史からも学ぶことができる。1970年代AT&T 反独占訴訟が起こり、1984年1月1日、AT&Tは長距離部門だけを持つ電話会社となり、地域電話部門は地域ベル電話会社8社へ分離された。ベル研究所もAT&T本体から分離されMCIやスプリントなどの大手長距離電話会社の成長を見ることになる。スプリントは反独占訴訟のおかげで成長したのだ。ところがスプリントとTモバイルUSの合併はニューヨーク州ジェームズ司法長官による反独占訴訟で米司法省の判断に影響する可能性がでてきた。米国は州の司法長官までシャーマン法による訴訟を行う権限がある。スプリントからみると皮肉なめぐり合わせの感もある。

他の一つは米国ロビー活動の強力なことで、おそらくニューヨーク州ジェームズ司法長官による反独占訴訟もAT&Tとベライゾンのロビー活動による影響ではないかと推測できる。米国は政権によって反トラスト法の運用が大きな影響を受ける。一般的には民主党政権は反トラスト法の運用を強化する傾向にあり共和党は運用を緩和する傾向にある。それにしてもロビイング次第で相当に影響を受けるに違いない。

ちなみにGoogle は2006 年 3 月にロビイストを雇用しワシントン DC でロビー活動を2009 年時点で 25 人以上のロビイストを抱え、第一四半期には 88 万ドル、第二四半期には 95 万ドルを支払ったとされる。(Microsoftは190 万ドル 、AT&Tは310万ドル)

孫正義氏は日本でこのような半トラスト法的な対処の経験をしていないので気になる成り行きではある。又、ロビーング活動も行っていない。これは日米の立法習慣が異なるつまり議員立法が当たり前の国と日本では省庁の法案作成が常態であることの違いに起因するのだがいずれにしても未体験である。日本でもいずれロビーング活動が活発化するのではないかと予測する。

米自治体による合併差し止め提訴は司法省の判断に影響する可能性も(ニューヨークにある店舗)=AP

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45983850S9A610C1000000/

【ニューヨーク=中山修志】米ニューヨーク州など10の自治体が11日、ソフトバンクグループの子会社で米携帯通信4位のスプリントと同3位のTモバイルUSの合併を差し止めるよう米裁判所に提訴した。携帯大手の合併は消費者の不利につながると主張している。両社の合併計画を審査している米司法省の判断に影響する可能性もある。

訴訟はニューヨーク州とカリフォルニア州が中心となり、コロラド、コネティカット、メリーランド、ミシガンなどの各州とコロンビア特別区が名を連ねた。(10州)

同日記者会見したニューヨーク州のジェームズ司法長官は「大手の合併は携帯電話サービス低下と料金の引き上げにつながる。低所得者らを保護するために訴えを起こす」と主張。合併が両社の契約者にとって年間45億ドル(約4800億円)以上の支出増につながる可能性があると指摘した。

通信行政を担う米連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長は5月、スプリントのプリペイド携帯事業の分離や、地方での通信網の整備を条件に両社の合併を認める意向を示した。もうひとつの規制当局である司法省が引き続き合併を審査している。

米企業の合併は司法省が競争法の観点から主体的に審査を行うが、州の司法長官も差し止めを求める独立権限をもつ。

州当局による提訴を受け、11日の米株式市場でスプリント株は前日比6%安で引けた。Tモバイル株も同2%下落した。裁判が長引けば合併によって次世代通信規格「5G」の投資を拡大する両社の戦略が遅れ、ソフトバンクの財務や投資戦略に影響が及ぶおそれがある。

米競争法に詳しい逵本麻佑子弁護士は「差し止め訴訟を抱えたまま企業が合併手続きを進めることは難しい。州当局の提訴が司法省の判断に一定の影響を及ぼす可能性もある」と指摘する。

 

2018年第3四半期のシェアは次のようになる。(statisca)

ベライゾン 34.91%
AT&T 34.07%
Tモバイル 17.51%
スプリント 12.13%


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