まさおレポート

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バルセロナ紀行 2 カサバトリョ続

2024-09-22 | 紀行 イタリア・スペイン 

 

カサ・バトリョの室内に飾られた、この一風変わった灯りは、まるで海底から浮かび上がってきた奇妙な生物のようだ。複雑に入り組んだ装飾と、渦を巻くような形状は、まさに自然界の神秘を思わせる。だが、驚くべきことに、この灯りはアントニ・ガウディが手掛けたものではないという。

ガウディがこの建物全体を設計し、曲線と自然の形態を随所に取り入れたことは周知の事実だ。しかし、この灯りは、彼が直接デザインしたものではなく、後世のデザイナーや職人によって制作されたものだ。それでも、ガウディの意図を受け継いだかのように、このデザインは建物全体と見事に調和している。

海底生物を思わせるその独特なフォルムは、まるで海の深淵から光を放つ未知の生物のようだ。ガウディが好んで使った自然のモチーフと共鳴し、まるでこの建物が自然そのものの一部であるかのような印象を強めている。彼が建物に込めた自然との共生という理念が、この灯りを通じても伝わってくる。

灯りそのもののデザインは、光が渦巻き状に天井へと広がっていくように計算されている。天井に映る陰影は、まるで水面の揺らぎのようであり、部屋全体に静かな動きを与えている。ガウディがこの建物に求めた「静と動」のバランスを、この灯りが一層引き立てているように思える。

ガウディ自身がこの灯りを製作していないとしても、その存在がカサ・バトリョにおける重要な一部であることに変わりはない。この灯りは、ガウディの建築哲学を理解し、自然と建築が一体となる世界を作り上げたデザイナーたちの功績とも言えるだろう。ガウディの建築は、単なる形状だけでなく、そこに生きるもの、光や影との対話を大切にした。その対話は、こうした装飾品の一つ一つにも反映されている。

カサ・バトリョの中を歩くと、至る所で自然界の息吹を感じることができる。この灯りもまた、その一部として光を放ち続け、建物全体を包み込む暖かさと幻想的な雰囲気を醸し出している。ガウディが夢見た自然との調和は、この灯りを通じて私たちに静かに語りかけているのだ。

 細部にガウディの曲線が。窓から見える街も面白い。

海底洞窟をイメージして作られたとする説もうなずける。

 亀の甲を連想させる灯り。亀の甲の規則性はあえて崩してある。海の中では揺らいで見えるからだろう。

多乳房を持つ天井。ガウディの作品はこの作品に限らず官能的でおいしそうだ。ナポリで見た多乳房を持つ像を思い出した。

 木の硬さと曲線がマッチしている。柱は流石に直線だが2本組み合わせてあるのはガウディ。

 いたるところに有機物の気配が感じられる。

カサ・バトリョの壁に埋め込まれたこのモザイクは、貝殻が一面に広がっているかのように見える。曲線を描く壁面に、無数のタイルが緻密に配置され、波打つような形状を作り出している。その中でも、目を引くのは貝殻のようにも見えるモチーフだ。この装飾は、海底に広がる貝殻やサンゴ礁を思わせる。

ブルー、グリーン、イエローが混ざり合い、光を受けるたびに異なる表情を見せ壁全体が自然の宝石箱のように感じられる。

バルセロナのタイル文化の歴史は非常に古い。バルセロナの名前の由来となったのは、第二次ポエニ戦争時代にカルタゴの将軍ハンニバルの父、ハミルカル・バルカがこの地域に植民都市バルキーノを建設したことにある。バルカの名がバルセロナの語源となっている。おそらく、その時代からすでにタイル文化がこの地に根付いていたのではないかと推測される。

タイルがないとガウディにならない。

カサ・バトリョの空間を彩る美しいステンドグラスは、ガウディの建築において特別な意味を持っている。ステンドグラスが引き立つためには、一筋縄ではいかない独創的な柱頭が欠かせない。この柱頭が、ガウディのデザインにおける重要な要素の一つであり、彼の建築の奥深さを物語っている。

ガウディの柱頭には、自然界からインスピレーションを得た滑らかな曲線と有機的な形状が見られ、建物自体が自然の一部であるかのように感じさせる。

この柱頭がなければ、ガウディのステンドグラスの美しさは半減してしまうだろう。ステンドグラスの柔らかな光が差し込むと、柱頭の複雑な曲線と影が絡み合い、光と影の舞踏が繰り広げられているかのような視覚的な効果が生まれる。

この柱頭には構造的な工夫も凝らされている。ガウディは、建物全体の安定性を確保するために、柱頭の形状や角度を精密に計算し、それを支える部分にも芸術的なデザインを取り入れている。

木材の温かみが漂う窓枠、そしてその向こうに広がる色彩豊かなステンドグラスの美しさ。それらすべてを支え、調和させるこの柱頭の存在は、カサ・バトリョ全体のデザインを完成させるために欠かせない要素だ。

 壁に埋め込まれたマントルピースもガウディしている。

こちらは裏側。粗い鋳物で保護されたテラス。

大振りなタイル製の鉢にトベラ。

防犯用に鋭い爪のついたフェンス。入り口には2本の美しい柱があり比較的ぶっきらぼうなデザインに華をそえる。

カサ・バトリョの柱に施されたうろこ状のタイルを目にした瞬間、不思議な感情が胸の奥に湧き上がる。それは何とも言い表しがたい感覚で、まるで遠い記憶の断片が蘇るようだ。このタイルのデザインには、自然の模倣を超えた何かがある。それが、何気なく見過ごしてしまいそうな日常の中にある特別な瞬間を呼び覚ますのだろう。

うろこ状のタイルは、見る者にさまざまな感情を引き起こさせる。触れてみたくなるような質感、まるで生き物の肌に手を伸ばしているかのような感覚。それは不安定さを感じさせつつも、どこか安心感を与える絶妙なバランスが取れている。自然界にある「不完全な美」をガウディが意図的に再現したかのようだ。

特に興味深いのは、このタイルの割り方だ。タイルの一つ一つがどのように組み合わさり、全体として一つの有機的なパターンを作り出しているかを観察すると、その複雑さに驚かされる。細かいパーツが互いに絶妙な角度で接合され、統一されたリズムを生み出している。その割り方には、明らかに計算された技術が隠されており、単なる装飾以上の意味を持っていることがわかる。こうした割り方が、タイル一枚一枚に個性を与え、全体としても調和を生み出しているのだ。

柱に埋め込まれたタイルは、一見するとシンプルなデザインに見えるが、その裏には時間をかけて熟考されたアプローチがある。この割り方に、ガウディが目指した「自然の模倣」というテーマが強く表現されている。自然界に存在するものはどれも独自の形状やパターンを持っているが、それらは無意識の中でバランスを保っている。ガウディは、その自然の美しさを、タイルの割り方という手法を通じて建築に取り込んだ。 

うろこ状のデザインが呼び起こす感情は私たちの深層に眠る感覚、たとえば幼少期の記憶や自然の中での感動を思い出させる。これこそがガウディの建築が持つ魔力であり、彼の作品が現代に至るまで多くの人々を魅了し続けている理由なのだろう。

屋外の光を十分に意識して淡い虹色に輝くようなタイル。

珍しく直線があった。なぜ?とガウディに聞いてみたい。

窓ガラス、和菓子にこういう風なものがあったなと思いながら見る。 

職人泣かせの手すりだ。ありとあらゆる造形がガウディであることよ。

見上げると、天井から降り注ぐ光が、青く輝くタイルの壁面に反射して、まるで海の中にいるような感覚に包まれる。カサ・バトリョのこの中庭は、ガウディが創り出した青の世界だ。タイルの美しさは光によって強調されている。 

まず目を引くのは、タイルの色のグラデーションだ。上部に行くにつれて、明るい青が広がり、下に行くほどに濃い青へと変わっていく。その繊細な色彩の変化は、太陽の光を受ける角度や時間によって、刻一刻と異なる表情を見せる。ガウディは、自然光がどのように室内に入り込み、建物全体にどのような影響を与えるのかを深く理解していた。そのため、この青のタイルの配置も光と色が空間全体に調和するよう計算されている。

光を受けると、タイルの表面はまるで水面がきらめくように輝き、壁全体が生きているかのような印象を与える。タイルの滑らかな表面と、凹凸のある装飾が、光と影を巧みに操り、見る角度によって違った青の世界を見せてくれる。窓枠に囲まれた木のフレームも、この青のタイルとのコントラストが美しく、自然の木材の温もりと冷たい青のタイルが調和し海や空を見つめる時のような広がりを感じる。

6弁の花のタイル。何気ないのだがやはりガウディだ。

アンモナイトの中にいるような空間。

 これは子供の遊びに見えるがしかしガウディ。

塔がまっすぐでない所がガウディ。

恐竜の背びれのような装飾。洗濯場に続く出入り口。

ガウディが6弁の花にこだわった理由については、明確な資料や説明は存在しない。彼はしばしば建築において自然界のパターンや形状を取り入れており、その中には植物や花の形も含まれる。雪の結晶や蜂の巣など、自然界に存在する多くの構造物は六角形や6分割のパターンを持っている。ガウディが6弁の花を好んだ理由の一つとして、自然界の幾何学的なバランスや美しさに基づいていた可能性がある。

ガウディは深い信仰を持ち、その影響を彼の建築に反映させていた。6は創世記で神が世界を6日間で創造したという記述に関連することから、創造や秩序の象徴とも考えられる。

ガウディの6弁の花は、そのシンボリズムを通じて、彼の建築における自然との調和や、神の創造力に対する賛美を示しているのかもしれない。

もっと迫って見る。牡蠣殻の美しさがあるね。

恐竜のうろこ風がお好きなようだ。


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