暴力団トップに極刑判決が出た。
改めて裁判官や検事、警察の気骨に感心した。日本の中核から戦中派が完全に絶滅する時代になり、どうなるのかなとの心配が吹き飛んだ。
戦後うまれと戦中派の気骨は次の経験からきている。
だから杞憂に終わってよかった。気骨の伝統は衰えていない。
(それにしてもオールドメディアの報道はなんとなく腰が引けていると感じるのはわたしの偏見かな。)
33年前の記憶から。
わたしは、所長室のホワイトボードの日程表に目を留めた。裁判日程が毎日のように予定に入っている。
こんなに料金滞納関連の裁判が多いのかと所長に聞くと、そうだ、営業所長の仕事は特にひどい料金滞納を解消することだという。営業所長はおもむろに机の引き出しから名刺の束を取り出した。一枚一枚見せてくれる。
当時1984年から1989年にかけて山口組と一和会の間に起こった山一抗争の時代で、毎日のように新聞で事件を報じていたためによく知られた広域暴力団組長の名刺がいずれも極太の相撲番付のような字体で印刷されている。
当時は携帯電話が普及する以前で、自動車電話が保証金20万円、加入料80300円、通話料6秒10円と高額で富裕層や会社幹部それに広域暴力団組長などを中心に利用されていた。
当時の山一抗争で幹部にも自動車電話は闘争や逃走にはまさに必需品であり、自動車電話を設置するための工事でトランクを開けたら拳銃がでてきたなどの話も工場の担当者から聞いたりする頃だった。
「XXさん、俺は軍隊経験者で激戦地を生き抜いてきた。だから怖いものはない。組の子分の料金滞納トラブルは大阪府警のOBが何名も組対応のトラブル対応に再就職しており彼らが担当する。
組長や滞納額の大きいものは俺が腹を据えて組事務所に料金を請求に行く。親分衆はあっさり金を払ってくれた。要は腹のすえ方よ」と話す。
親分衆にはこの所長が対応するという。この方は死地をくぐってきた人間が持つ何か、腹の坐りを感じさせた。かつて職場で何度か聞いた、
俺は軍隊経験者、というセリフもすでに遠くなっている。
一方、軟弱な世代に失望したこともある。Gさんは戦後世代だ。
某日 販売在庫管理システム=DRESと呼ばれた共同利用型在庫管理システムには大企業から中小に至るまで幅広い顧客がいた。数多い顧客の中には利用料金を滞納するケースもある。ある程度以上の額になると幹部が督促に行くことになる。
Gさんもそんな顧客にある日督促に行ったところ、相手に日本刀を畳に突き刺されて脅された。取り立てどころの話では無かっただろう。ふつうの勤め人ならだれでもそんな目に遭ったなら小便を漏らしてもおかしくない場面だ。