えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

歌とミニエッセイ

2012-11-17 20:14:13 | 歌う

 芸名だそうですが、森光子って名前とてもいいですね。森は童話を、光は希望をおもわてプラスイメージ。四十歳を過ぎたら女は枯れてゆくのに、森光子はその頃から咲きはじめて九十歳でも花盛りとは。光子にちなんで私の「光」の歌を選んでみました。悲しい、淋しい、辛い歌のなかに光が詠み込まれた歌が多くあります。陰を際立たせるのは光、光と陰は一対なのでしょう。

       ★光をうたう十四首     松井多絵子

蹴りたいのはわたしの怠惰、なにもせず春のひかりを待ちわびている

うしろから背中を押してくれないか午後の光の無数の腕よ

草食の鴉が近ごろ肉食になったと言う君、前歯が光る

春先にわれを酔わせた紅梅の花のなき枝を光が走る

光線を折り曲げ風を倒しつつ劇場遺跡の石段おりる

うち寄せる波がギラギラ光ってたあの八月にはもう戻れない

なぜだろう光りそこねてしまうのは、わたしは陰に愛されている

枝ごとに新しき葉を光らせて南の窓とう窓はさみどり

ひるすぎの二階より見れば新緑のどの葉もどの葉もひかりに従う

光線が縺れていたりまだ花のひらかぬ藤のしだれる枝に

かつてあふるるほどの力のありし手は、あふるるほどの光のありし手は

うつつにも目交いに紋白蝶がいて光の海を浮きつ沈みつ

町なかの広き家屋が壊されて名もなき遺跡にひかりが集う

むかしむかしすれ違うたびときめきし光の君を今夜も避ける

         ※光の君も私を避けたのかもしれませんね。


コメントを投稿