マグロは泳いでいないと死んでしまうとか。私も歩かないと病気になり死ぬような気がして毎日歩いています。雨の日は人の少ないビルの商店街を。ケータイに歩数、距離、消費カロリーの記録がまるで成績表のようです。
★歩くわたくしの十六首 松井多絵子
歩かねば歩けなくなるかもしれぬ左の脚もきげんが悪い
泳がねば死ぬとうマグロのごとわれは昨日も今日も一万二千歩
明日もまた歩いてくれよバスタブのぬるき湯の底に眠そうな脚
薄氷を踏むごと二月の夕暮れの舗装道路を歩いていたり
ひとりではリズムにならぬ黒猫の歩幅に合わせて歩いて行こう
メモ帳もカメラも持たずただ歩く縄文人も歩いたかこの丘
詩の餌を探すのはやめる遊歩道を五歳の子らと歩いているとき
A面とB面のわれが添いながら眠りの森を歩きはじめる
※以上は『えくぼ』より
縦に歩く蟹もあるらしさもあらば横へ横へと歩くぞ我は
俯いてうつうつ歩くがん張るという意思すでに縮みていたり
歩けども歩けども一万歩にならず陸橋の下を流れる車
ヒートテックヒートテックと歩くこの真冬の路は氷のようだ
薬師寺の塔の上なる雲脚が歩きだしそう、西日の方へ
しかしながらしかしながらというように歩いているかも肩を並べて
ひさかたの光かぼそき枯草の小道を歩く、街へ行こうか
着ぶくれた我がのろのろ歩くこの路は東京マラソンコース
以上は『厚着の王さま』より
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