ワタシが文学青年だった頃読んだ本の中に、小説に高見順さんの代表作「いやな感じ」がありました。50年も前に読んだ本ですから、内容や筋書きなど覚えているはずもありません。その頃一日2冊ペースで単行本や文庫本を乱読する日々であったのです。
その嫌な感じは、昭和の初期のあるアナーキストを主人公にして、国家転覆や革命をもくろむ、といういささか無茶な話ですが、昭和の頃はそんな思想家が理想を求めて暴力やテロをいとわぬ過激な行動をとっていた時代だったのでしょう。
先日届いた小冊子は、現役時代にお世話になった金融機関からのOB向け会報でありました。その、会計報告や訃報などの連絡事項のあとに寄稿された随想やコラム・イベント報告などが続きます。その巻頭が「エンディングノート・断捨離」の話題でした。最期を迎えるにあたって遺族にわかるように記録を残す、あるいは片づけるべきものは処分し、家族に迷惑をかけまい、といった内容でしょう。しかし読む気にはなりません。いきなり自分の終末を迎える準備をを始めよう、と書いているのをみたら「嫌な感じ」になりますよ。恐らく数千人は居る会員で、平均年齢は70歳代でしょう。
60代になって仕事から解放されて「これから第二の人生を謳歌し新たなことを始めよう」という人も多いはずなのです。それをのっけから「エンディングノート」って、趣味悪い、センス無いなぁと思って嫌な気持ちになりました。
そうでなくてもこのところ、ひと月位「嫌な感じ」で悩まされております。テレビなどのちょっとした、なにげないシーンや会話・表情を観た時などに、胸のあたりがざわつき不安感に苛まれるような、いやな感触を覚えることが一日に何回も起きるのです。ちょっとたつとそれが消えるのですが、また数十分か一時間単位かで繰り返されます。胸のあたりがざわざわしキューッと何かを抜き取られるような嫌な感じが襲ってくるのを、いつものクリニックの先生に話したら「軽い鬱病」のようですね、と診断されています。
うつ病の軽症は、疲れやすい・やる気が出ない・肩こり・頭痛・気分の浮き沈みが激しい・寝すぎてしまう、といったことのようです。元気がなくなって気持ちが落ち込み、心と体のエネルギーが減少している状態を指すというという表現もあります。実際ほとんど自分の体調が当てはまっております( ﾉД`)ｼｸｼｸ…
このところ「篆刻」だけは熱心に取り組んでいますが、それとてせいぜい一日一本で、印刀をもつ気になれない日もあります。暑さのせいにして草むしりもおざなりで、ガーデニングにかける時間は激減しているのです。昨日一昨日と、昼過ぎの倦怠感が激しく1時間以上の昼寝を続けてしまいました。
うつ病は、多くはきっかけになる心因や外部からの攻撃、解決困難な病気や問題を抱える、経済的困窮、人間関係のこじれ、パニック症候群などの「原因」があります。その病気を治すためにはまずそこの問題の解消や改善が急務なのです。しかし、現在にのワタシは心を病むまでの原因が見当たらないのです。唯一この3月で退任した自治会長職、在任中様々な嫌がらせと、不規則発言で罵倒する相手、など心を痛め嫌な思いをしましたが、一応は離れました。自治会性うつを発症して、精神安定剤を処方されたのが今年の年頭あたりだったか。
今現在、自分と家内、そして子供たち家族も安定して落ち着いています。二人は新婚できれいなマンション住まい。長兄は、昨年長女（孫娘）が生まれ、仕事家庭ともに充実しているようです。ワタシにも大きな病気、断続的な身体的不調や痛み、金銭的・経済的な問題、厄介な人間関係、ご近所トラブルなど何もないのです。将来に対する不安もなく、メダカにガーデニング。書道・篆刻と、誰にも邪魔されず好きなように暮らしているのにどうしてうつ病になりましょうや？
篆刻の公募展への出品という新たな目標が出来て、うつ病などと言っている場合ではありません。しかし、疲労感・集中力の欠如・眠気「嫌な感じ」がこれ以上続くなら、一度ゆっくり病院であちこち精密検査をうけ心療内科にもいかないとならないことになります。
あと一か月ちょっとが作品作りの勝負であります。また2.3日後には「お盆」の前であり、わが一族総勢11名が帰省して集合し、「ハングリータイガー(笑)、焼き肉」などを食べに行くことになると聞いております。勿論スポンサーはワタシなので、十数万の出費は覚悟せねばなりますまい。この程度で病気が悪化するはずもなく、むしろみんなの元気な姿を見ることで「嫌な感じ」はどこかにすっ飛んでいくに違いありません。
