植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

田黄のようなものと鶏血石

2022年11月14日 | 篆刻
ここひと月近く、ヤフオクでの入札を躊躇していた「お宝」がありました。古今の銘石のコレクションと思しき「古い印材19本」で最低落札価格20万円でした。海千山千の古美術商やコレクターが集うヤフオク、その印材部門でも目立つ出品ではあったのです。

「清 寿山石印章 十九件 缶翁」 という説明書き、写真で見ると「缶翁」=呉 昌碩先生の雅号の側款がある黄石はじめ、非常に珍しい高級石ばかりを集めている、と思われるのです。田黄石に近似した黄色の自然石形の印材だけで7個、このうちの2,3個でも本物の田黄ならば、あるいは呉先生の石が真正のものならば決して高いものではありません。

あくまで最も高級・希少石として性善説的な観点では「田黄3、高山凍・鹿目格・連江黄など4、鶏血石1、楚石1,紐つき芙蓉石2、広東緑石2、封門青1、桃花紅、紐つき吊耿石(ちょうこう) 2」などに見えなくもないのです。もしそうであれば、最低でも1本1万円位、高いものは3万円以上になりますし、なによりそうそう出回るような代物では無いのでなんとしても欲しくなるほど魅力的なラインナップでありました。しかし、出品後その品に未だに札が入らず、数回持越しになっているのです。

そして、これとは別に、数日前に落札した「鶏血石 寿山石 検/田黄」という二本立ての品が届いたのです。この「検/田黄」という表現が何を意味するのかは謎でした。寿山石という言葉と対になっていて「田黄かどうか検査したが、やはり寿山石ですな」という意味?

なんにせよ、この二つが4千円で落札したのです。鶏血石だけで言えば、新鶏血石と言われる最近の石でも、小さい小粒で最低5千円はします。全紅と言われるような珍しく高価なものは当然数十万円もするのです。田黄にしても、本物なら1万円や2万円では手に入りません。つまり、この2点セットは専門家さんやコレクターさんの目には「バッタもん・偽物・粗悪品」と見えたのです。実際その出品時の写真は全く美しいものではありませんでした。
薄茶けて白けた写真だったので、到底値打ちものとは見えませんでした。ワタシも、これはどうなの?と思いつつ、かつて若干の成功体験があり、数万円の金を出して入手する余裕が無いため、こうした怪しげな品でも、ダメもとでとりあえず応札しているのです。どうせ高値更新されるだろうと思いましたが、たしか入れたのが1万円の上限(笑)金額でした。ところがわずか5人の入札者しかなく、たった4,099円で落札しました。ただ不思議なことに、その2番目3番目の入札者は、評価点が74696点・5826点というヤフオクでの猛者・常連であったのです。

まぁ、いいや、偽物でも人造石でも5千円なら腹も立たない。少なくとも鶏血石のほうは、程度の差こそあれ本物だろうと感じていました。そして届いたお品がこれであります。


どうです♡💕。ちょっと磨いて照明を当てて撮り直しただけですが、別物に見えますね。左の鶏血石はへこんだところが少し赤黒く変色・劣化していますが、半透明の白い石に赤い部分が多くて大変美しく、真正の(旧)鶏血石であります。底の赤はまさに鮮血といいたくなるほどの赤色であります。ワタシの収蔵品ではトップクラスで、3~4万円してもおかしくない逸品と見ました。鶏血石は、半透明の白い石質がベースで、朱の部分が多いほど高価になります。また、最近出回る鶏血石は、ほとんどが新鶏血石と言われる安いものです。

更に田黄か?という黄石は、懸念していた人造石では無い、れっきとした自然石でありました。これを見た瞬間、梱包を開いた瞬間に、飛びあがりたいような有頂天の気分になりました。①表裏にきちんとした薄意や細工がある ②微透明な黄茶色 ③2か所は磨いていない「皮」を残している ④側面と底面が同質同色である、といった特徴だけで、とても価値が高い田黄・または田黄に間違われやすい幾つかの希少石であることを確信しました。

田黄石は、黄金と同じ値段で取引されたという中国印石3寶の頂点にある美石であります。大勢の民衆が遠くから、争ってその産地である「田坂」に押しかけ一帯を掘り返したそうです。まさにゴールドラッシュでしょうか。一つ見つければそれだけで、ひと財産となったのです。

そのため、よく似た外観の石を田黄と称する、切り出した角柱の黄色っぽい石を自然石のように造形し薄意を彫る、駄石を長時間煮込む、といった手口で偽物・類似品が横行したのです。更に樹脂などで人造石を作る、似ても似つかぬ駄石に厚く似せたフィルムを張り付けるといった粗悪品も出回っています。

ワタシは本物の田黄石を求めて、数多の品々をヤフオクで落札しました。しかしながら「田黄石のような」別種のヨウロウ石はまだマシで、粗悪な人造石をさんざんつかまされました。倉庫に転がってるものは恐らく3,40個ありますが、すべて樹脂などで固めた人工物で、ほとんど何の価値もありません。その一部がコレ。パッと見ると田黄に見えるのです。

こんなガラクタがヤフオクでは平然と「田黄石」と銘打って出品されているのです。わたしとて、半信半疑で、ダメもとで安く落札したのですが、それでも恐らくその投資額は5,6万円は超えているでしょう。

こうした品物は処分に窮するのであります。室内に飾るのはワタシのプライドが許さず、騙されたという記憶を蘇らせるのです。燃えるゴミにも出せず、土に埋めても溶けません。ワタシが悪魔の心の持ち主ならば、ヤフオクで素知らぬ顔で出品するかもしれません。実際目利きであるはずの廃品処分業者さんや古美術商らしき業者ですらとぼけて出品してくるのを見かけます。

しかし、わずかなお金を取り戻すために、他にワタシの様な残念な思いをする人を増やしたくないので、こうした「ババ抜き」の連鎖は慎むべきだろうと思います。

これらに投じたお金は、決して無駄にはなりません。いつしか、真贋を見分ける目を養ってきて、様々な知識・経験を得ました。授業料と思えばどうということもありません。

因みに冒頭で紹介した「19本20万円」の印は、ネットで探したところ、数日前、全く同じものが、複数の怪しげなショップで50%引き10万円で販売されているのを見つけてしまいました。これは危険なサインであります。ヤフオクで20万円という「高めの価格帯」を示しておいて、ショップで飛びつくのを待つ、あるいは値打ちものとみせかけて代金を騙しとる、といった最悪のケースがあり得ます。もし、普通に10万円で売りたいならば、ヤフオクの最低価格を半分に下げる、というのが物の道理ではなかろうか、と思うのです。

その品は落札されず、まただ期限を延長して出品されています。ワタシは思い切って入札しなくて良かったのだ、と独り言ちする朝なのであります。

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