植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

友達はどこでできるのか 花友・犬友・印友

2023年04月25日 | 植物
ワタシの家内はそこらではなかなかお目にかかれないほどの愛犬家で、亭主であるワタシそっちのけで可愛がっております。甲斐犬である「スミレ」が当家に来てまもなく3年になります。彼女の生活は、スミレの規則正しい日常を維持することが前提であります。朝は7時前に散歩させ、夕方にもう一度散歩、19時半には最後のおしっこタイムで外に連れ出します。

ワタシの家は相模川の沿いにあり、道一つ隔てて遊歩道・土手であります。早朝から散歩やジョギングで多くの方が夜まで行き交うのです。そこで、家内たちは犬の散歩仲間が形成されているそうであります。メルちゃんやいくらちゃんやなんやらちっこい愛玩犬を連れた奥様方に、狩猟犬で真っ黒な、いかついスミレがおやつをくれるのでおとなしく待っているそうです。彼女たちのことを「犬友」と呼び、町内の出来事から、世間の様々な事柄の情報交換を行い意見交換も交わすのだそうです。非常に正確性が高くリアルタイムで地域のコミュニケーションの場と言えましょう。井戸端会議とも呼びますが。

昨夜は地方選挙の話題になり、二人立候補した市長は誰に投票したとかを実名で言い合うそうです。「画数が全然違うから、後方で見ている立会人は誰に投票したかすぐわかるよね」とか「私はいつもひらがなで書くことにしてるのよ。だから今回はおちあいひろみつ」「えっ、それってなんか違うんじゃない?」などと、愚にもつかない会話の中で、すでに開票前に誰が当選したか想像がつくのです。

ワタシは以前から「グリーンスナップ(GS)」という投稿サイトに参加していて、植物をメインにした写真を毎日投稿しています。残念ながらここ1年ほどは公私にわたって多忙を極め、体調も思わしくなくて、お休みをしていたのですが、4月に入って再開いたしました。植物や花・ガーデニングを愛する人たちのコミュニティなので、投稿写真を介していろんなコメントを上げることで、顔も名前も知らない人と仲良しになります。これを「花友」と呼んでおります。ワタシも幾人かの花友さんが出来て「篆刻印」を彫って差し上げたり「書」をプレゼントしたりしているのです。

GSを再開したら、覚えていただいた方も大勢いて、ありがたいコメントなどを頂戴しております。中にはワタシの最近半紙に書いた行書の写真を見て「少し字が元気がないように見える。体と書は一体で、体調を表しているのでしょう?。」と心配してくれた花友さんもいらっしゃいました。

昔は、面と向かって話をし、電話で連絡する、手紙を書くというのが友情を交わす手段でありました。少なくとも知り合いになるためには誰かに紹介されたり出かけて、何かの団体やグループに入ってはじめて友人を作ることが出来ました。しかし、最近はインターネットが生活の隅々まで普及し、インスタグラム・フェイスブック・ユーチューブなどある程度の個人情報を開示するツールから、チャットや各種のSNSを通じて全く知らない方と「匿名性」を前提にコミュニケーションがとれるようになりました。

そのおかげで、自分の趣味を広げや同好の士との情報共有という手段が大幅に増えました。今は書道チャットで様々な書に関する知識を得る手段となり、自分の諸作品や篆刻を公表して意見やアドバイス・評価を受けることができます。また書道チャットで知り合った方に20人ほどワタシが印を彫って差し上げることもできました。無論、原則「ただ」、利益にはなんの興味もないので無料で提供してきました。そんな方たちとはグループlineにお招きして篆刻や書道に拘らない普段の生活を開示したり、お互いに相談に乗ったり仲良いグループとなっています。実際、そのうちお二人の方とはお会いしております。それに派生して「篆刻チャット」にも参加するようになって先生・篆刻家さんとも知己を得ることができ、篆刻の技量向上に大きく役立っております。こちらは「印友さん」と呼んでおります。

ただ残念なことに篆刻チャットは、最近新たに参加した方々が、硯と墨(ヤフオク・メルカリ)の出品物を見つけては、これはどういう出自だろうとか、安いか高いかなどと夜中までやりとりするようになって「嫌気」がさしたのです。自分が興味を持った硯や古墨を買うべきか値打ちがどうだ、とかをチャットのメンバーの知識に乗じて値定めする、という浅ましい意図が見え見えなのです。

チャットというのは基本的にはあるテーマや趣味を目的として集まった集団で自由に意見交換し合うので、何を書き込もうが勝手ですが、自己の利益だけを満たすために利用されるのは趣旨が違う、と思って静かにそっと「抜けて」しまいました。何か意見を出して、自分がこういう理由で離れる、といった書き込みをしたら不愉快に思う人・困る人もいると思いましたから。またそのうち復活参加するつもりでありますが。

さて、ワタシの仕事場から国道を隔てた一戸建てに日本人の旦那さんと外国人の奥様が住んでいます。奥さんはガーデニングに熱心で、さほど広くない敷地内に、ぎっしりと植物を植えています。春にはソメイヨシノがが咲き、数週間前までは二階家の中段にずっと這わせた「藤」が見事に咲いていて道行く人が足を止めるほどです。国道沿いの歩道の植え込み(公有地ですね)にも、自分の花壇のごとくレンガなどで囲い小木や草花を植えています。

うちの店舗建物を建ててから10年になりますが、他所の町内の人で、国道の向こうなのでこれまで一度も口をきいたことはありません。顔も名前もわかりません。ところが、先日の投票日の朝、投票所に行くために横断してその家の前を通った時、思ってもみない状態に気づいたのです。

それは本ブログで紹介した横綱級の凶悪な雑草「畑ニラ」であります。いったん蔓延ると球根とそのまわりに分球する「鱗形(リンケイ)」 を際限なく増やし、ほかの植物を駆逐するとんでもない外来植物です。しかも花を咲かすと無数の種を形成し風に運ばれて近隣に勢力範囲を広げ、駆除が非常に困難になります。

これがあろうことか、そのお宅の花壇にぎっしり・びっしりと広がっておりました。栄養が行き渡っているせいか、葉っぱは長く伸びて40cmほどの高さの花壇から歩道にまで届いておりました。時節柄、香りのいい白花が無数に開花しておりました。!!!!!これはダメだ!、これが国道を超えて、うちのお店の隣の敷地に咲いて、3年ほど前からワタシの果樹園コーナーに発生するのを発見していたのです。外人さんのお宅の畑ニラが、発生源かどうかはもちろん不明ですが、自分の記憶と観察では、西の方角(つまり国道の向こう)から徐々に東に向かって生息域が広がっているのです。

つまり、ワタシが泣き泣き毎年毎日のように畑ニラの駆除をしているのに、道一つ隔てたお向かいでは花壇に、あたかもグランドカバーのようにその凶悪な雑草を育てていたのでありました。

投票を終えたワタシは、迷わずそのお宅に向かい、チャイムを鳴らしました。外人の女性が出てきました。こんな間近で欧米系外国人の顔を見たのは生まれて初めてかもしれません(笑)。早速、この雑草がどれだけ危険で近所迷惑なのかをやんわりと説明しました。もし意図的に育てているのでなければ、対策を取ってほしい、必要なら自分が手伝うと申し出したのです。人の家で何を植えようが、その家の勝手ですから下手するとトラブルになります、ましてや相手は外人さんですから。

ドイツ人だと名乗る彼女の説明は「だいぶ前に勝手に生えてきて、そのうち手に負えなくなったので駆除できず放置している。秋には葉っぱを刈り取るくらいだ。花がいいにおいがするので認容している」でありました。
知らないおじさんがいきなり訪ねてきて「お宅の植物は増えて困るから処分してくれ、なんならワシがやってやる。」と言われて、はいそうですかとは言いませんわね(笑)

怪訝そうな顔をして、警戒している様子がありありとしていました。一応ご主人に、そういう申し出があったことを伝えてほしい、お向かいでガーデニングしているから必要があればいつでも声をかけてください、と言って国道を渡ってマイガーデンに戻ったのです。

その時、閃きました。

うちで育てているクサイチゴの収穫がピークで、たくさんなっています。それで、急いで片手の掌に乗るくらい十数個を急いで摘んで、とって返したのです。花壇に向かって当惑している外人さんに声をかけて、摘みたてのイチゴを食べてみるように勧めたのです。彼女は匂いをかぎ、じっと観察した後恐る恐る一つ口に入れました。するとゆっくりと彼女の表情が変わったのを感じました。故郷のドイツではこのベリーは取れない、初めて口にするものだということでしたが、プチプチした食感とほんのりとした優しい甘さを感じ取ったのでしょう。

そして、彼女が私に向かって手を差し出したのです。それは握手を求めるものでした。この瞬間、ワタシを信用し警戒を解いたのだと思います。彼女は名前を名乗り、ワタシは名刺を差し上げました。

それっきり言葉を交わしておりませんが、その日の午後、ご主人とお二人ですべての「畑ニラ」を花壇から取り除く作業をしていました。多分、良いきっかけとなったのでしょう。夕方には畑ニラの葉っぱで覆い尽くされていた花壇のレンガが、全部上まで見えるようになり、植えてあったモミジやオタフクナンテンなどが美しい姿を見せていました。

彼女とお友達になれたかは別にして、とりあえずは声をかけ、クサイチゴを植えていてよかったと思うのでした。

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