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植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

凍石と水晶凍

2023年12月21日 | 篆刻
このブログで何度も説明している中国印材三宝が「田黄石・鶏血石・芙蓉石」であります。しかし、石の奥が深いところはこれに「とどまらない銘石が数多く存在するのです。概ね①採取量が少なく希少性がある ②透明度・純度が高い ③見た目が美しいといったところであります。その最たるものが「水晶凍」と呼ばれる「凍石」の一種です。

そこで本日はその水晶凍などのお話をいたしたい、と思って「値打ちもの」を集めた収納場所から撮影のためにそれをピックアップしようとしたら、これが大変でした。もともと整理が大の苦手に加えて、大半が印箱に収まっています。数百ある印箱を開けてみないとなかなか見つからないのであります。加えて「整理あるある」で、こんなのがあったのか?とか、おやこいつはすごい石だとかチェックを始め、どうせなら仕分けをするか、などど考え始まると作業が捗りません。

凍石は、透明度で言えば、半透明・亜透明あたりまでで、一部だけとか微透明は除きます。出来るだけ透明度が高く、雑味や夾雑物・模様なども無いものが喜ばれます。具体的には天藍凍・桃花凍・牛角凍・高山凍・魚脳凍・緑凍石など多種ですが、その中に「環凍」と言われる白い丸い(輪)模様が入っているのは特別珍しく、神秘的で美しいので非常に高値になります。
そしてほとんど幻の銘石と言われ見たことも無いと言われるのが「燈光凍」という紅黄色に透ける石であります。死ぬまでに一度は拝みたいものだと思いますね。

そしてその凍石の代表格が「水晶凍」であります。
小林徳太郎先生の「石印材」にはいくつかの水晶凍を紹介しています。

これは第一義では、前にこのブログで説明した「坑頭洞」とそこに近接する「水晶洞」という水坑で採取される透明度の極めて高い凍石です。色は乳白色に近い半透明から黄色味を帯びた「黄水晶」まであるようです。さてそこでワタシのコレクション、どれが「水晶凍」に合致するのか?、また、最近印材を20個ほどまとめて落札した(12千円)中にあった、黄色い透明度の高い石が水晶凍か?であります。

引っ搔き回して出てきたそれらしい「凍石」がこれであります。(※幾つかの石には価格ラベルが貼られておりますが、ヤフオク落札時に付いていたもので、信憑性は分かりませんがあくまで参考であります)
左は乳白色系の水晶凍ではないか、と考えています。紐が丁寧な手彫りなのでんかなかのお品ではないかと。右は凍石であること以外の情報が無いので確証はありません。

こちらは「水晶凍」ではなく、「桃花凍」で良かろうと思います。ほんのりピンクがかった亜透明の石はさほど高いものでは無くても、彫りやすそうで見た目も爽やかです。

こちらの左の石には「魚脳凍・七星獺(カワウソ)章」と書かれたカードが付いていました。右の石は「茘枝 (ライチ)凍」との説明で出品されていたものです。まぁどちらも信じるしかないのですね。

この辺になるともうわかりません。左は寿山石ではなくてパリン石あたりかもしれません。中央のはなんとなく水晶凍ぽいかな、右の石は全体の紐を見ると安物の石では無かろう、といった感じです。

それで、落札した時に「水晶凍」と表示されていたのが左の石で、半透明の乳白色、これはある程度信頼してよかろうと思います。これが白っぽい水晶凍なのだと。右のはまごうことなき凍石であります。透明度がひときわ高くて人工物かと思えるほどです。

さてもう一つの疑問が冒頭に書いた「印材まとめて」の二つの石です。
入手時はこんな状態でした。下段の左二つです。

これを濡らしたサンドペーパーを三段階で研磨し、最後に専用塗油を塗布し磨いたものがこれであります。
さて、これは「凍石」であることには疑いの余地はありません。黄土色で半透明、環凍とは言えないまでも白い紋様が流れています。

状態が悪く、中にはいくつかの条紋もあって完全な一級品の黄水晶とは言えませんが、水晶凍が原石とみて良いのではないか、と思いますね。もしそうならこの二つ、磨きをもっと美しくし、手指で何度も艶が出るようにしたら、一個数万円の値段がつくに違いないのです。

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石印材の鑑定結果 後編

2023年12月20日 | 篆刻
先日ヤフオクで入手した「石印材」の一つ
「寿石」の側款がある石の鑑定であります。
一応、入手価格を先に書いておきますが、たったの「千円」でありました。 
ヤフオクの出品物の表示では「篆刻 古印材 鶏血石・田黄・パリン石」などの頭書きがあったのですが、さほど美しい石・高価な石であるという風には見えませんね。

結論から言えば、「最低落札価格の千円」で、ワタシ以外の入札が無かったわけですね。印箱も無し、ただ寿山石で刻の文字があるだけの、15mm角の印で、「京子」と印面に朱文で彫られているのです。
ワタシが単独で安い価格のまま落札できた最大の幸運は、出品されていた品物の1枚目の汚らしく見える説明写真であったのです。

こちらの最も注目し、鑑定するポイントは3点になります。
①石の種類
②側款名の作者が「雨宮寿石」さんか
③施されている薄意・石の仕上げ

まず、石の種類であります。
説明ではどれである、と限定できておりません。ワタシが見るところでは「寿山石系 赤い朱の斑点が沢山ある 艶やかで黄土色の半透明」のいい石だとピンときました。届いた品物がコレであります。


ワタシの見立てでは「坑頭洞」の産であろう。いわゆる坑頭黄あるいは坑頭紅ではなかろうかと思ったのです。
小林徳太郎先生著の「石印材」でも2ページを割いて取りあげられている「銘石」です。坑頭洞は天藍凍や牛角凍・坑頭紅などマニア垂涎の石を輩出した「名坑」で名高いのです。
下地が黄色味がやや強いこと、大きさが半分程度ということを除けば酷似しております。

さて、次のポイント「作者名」です。この場合は石の作者ではなく、印面に彫った人を差しますが、それが「寿石」ですね。ネットでググると真っ先にヒットするのが間宮壽石(まみや じゅせき )先生であります。多くの篆刻職人を生み出した名門間宮家の号で、戦後でも指折りの篆刻家さん、現在は3代目が跡取り・名跡だそうです。 

そして③の石の細工です。原石を出来るだけ残すために波の形の「薄意」という薄い彫りがそっくりなのです。経験的に言えば、珍重される美しい印材、希少性の高い石には、こうした装飾が施されることが多いのです。ダメな(安物)順番から言えば、こうなります。
切り出した石のままの角材→各面を研磨する→上部を丸みを持たせた曲面にし、4隅は「面取り」して丸みを帯びた形に磨く・または上部に獅子などの飾り彫(紐)を施す→石を減らさないため、あるいは採石した自然石の形を残すため、表面に薄い浮彫を彫る(薄意)

本現物は頂点の4隅全体にやんわりとした波(雲)型の薄意があり、いかにも奥ゆかしいのです。石の形自体が自然系を加工しているように見え、非常に美しく磨かれて艶があります。これらは、何と言おうが貴重な石だからこその細工・扱いなのであります。刻字は、なんとも言えません。字画も少なく雅号ではなく「本名ー京子」と彫られております。
「寿石刻」の側款は、行書体で一目で手練れの手によるものだとわかりますね。

というわけで、ワタシにとっては掘り出し物、大変お買い得であったと喜んでおります。千円で入手したものですが、石は坑頭紅(黄)という大変高価な美しい印材であります。「間宮寿石先生」の真作と断定してよかろうと思うのです。ではいくらの価値があるか?、それはよくわかりません。ワタシはコレクターではありますが、商いをしているわけでは無いし、今までのところ集める一方で、一度もヤフオクに出品したことが無いのです。大体2.3万円とみてもいいかもしれませんが・・・。

因みに、昨夜は大変貴重な石材や田黄石が多数出品されておりました。年の瀬にきて「宝くじ」を買ったと思えば空くじなしのヤフオクの方がはるかに良かろうと思って、5件の出品に対して、普段の3,4倍ほどの高額な入札をいたしました。35千円以上で、最高で55千円の入札もしたのです。全部落札出来たら最大20万円位になるところでした。今朝起きて見たら結果は全敗、他人様に落札されてしまいました。夜中近くまで入札価格競争に巻き込まれたら、一件で6万円とか7万円とかになってしまうのです。ま、悔しいけれど仕方ありませんね。
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相撲なんてやめたらどう? 寺尾さん達がお気の毒だと思いませんか?

2023年12月19日 | スポーツ
昨日のニュース報道で大相撲の元関脇「寺尾」錣山親方が亡くなったことが報じられました。享年60歳、お兄さん鶴嶺山(享年60歳)、次男の元関脇坂鉾さんも58歳で亡くなっています。これを早死の家系だなぁ、で片づけられない問題であると思っています。

ワタシは、以前「大相撲は病人を育て、結果として早く死んでしまうーだいたい平均寿命が62歳」ということから、この伝統文化をさも最優先すべく放送するNHKに苦言を呈してきました。

ではお相撲さんはどうして早死になのか?
理由は3つ、一つは激しい稽古や頭からぶつかり合う立会いなどで、身体の中心部を傷つけるからでしょう。場内に響き渡るような頭同士が当たった時の衝撃や、頚椎などへのショックが現役引退後の体調に深く悪影響を及ぼすのです。
二つ目は、「太る」ことにあります。お相撲はほぼ例外なく体を大きくした方が有利だと決めつけていて、体に、肉や脂をつけさせるために、大量のカロリー、とりわけ炭水化物を摂取します。多少太っていても、若ければその位どうということはないレベルですが、相撲は尋常ではないほど体重があります。関取になると、平均身長184センチで、体重が162㎏だそうです。ワタシならば身長が170㎝なのでその比率で言えば150㎏という計算になります。ざっと常人の2倍以上になりますね。これを関係者はほとんど筋肉だと、説明していますが。どうです?筋肉に見えますか?

最後は「不摂生」にあります。そもそも朝ご飯抜きで一日2食、食べたら昼寝というパターンだそうです。それ以外に大量の「飲酒」が当たり前だと聞きます。タニマチと言われる熱心な支援者が、大量の食物やお酒・お金を寄付するだけでなく、場所中以外にはあちこちから酒席のお呼びがかかって、大酒を飲み、山海の珍味をたらふく食べるのだとか。これでは体にいいわけないよ♪ですね。

日本人は、体が小さく糖尿病などの生活習慣病になりやすいのだそうです。そこに無理やり体に悪いことをし、お腹いっぱいに詰め込むものだから、結果としていろんな病気を発病して平均的には62歳くらいで寿命が尽きる、という事になるようです。

以前から問題になっている八百長相撲があり、不透明な金銭のやり取りがあり、地下では大相撲トトカルチョという違法賭博だってありました。ワタシは「大相撲なんてやめちまえ」と主張しましたが、倅からは抗議のLINEが来ました。「俺は大相撲ファンだから、なくなると困る」というのです。格闘技好きな若い人が多いのは承知しております。また、昔から白黒テレビで相撲を楽しみにしていた高齢者もいます。またぽっちゃりでほとんど裸の男を好む女子がいるいるのかどうか・・・

だからといって、ある職業の一団だけが「命を本当に縮めている」のを面白がって娯楽としてみるのはどうかと思いますね。やっている本人たちが自分の寿命を一年10百万円単位で売っていると考えているのかは知りませんが。
どうしても相撲という「日本の伝統芸能」を存続させたかったら、最初から八百長(プロレスみたいな出来レース)にして、面白く見せればいい、と思います。また、スポーツとしてカテゴライズするなら、体重別にして「柔道・レスリング・ボクシング」などと同じく体重別にして、「体重を絞って減量して筋肉だけにそぎ落とす」というスポーツ界では当たり前の「公平な条件」で優劣を決めるのが当然だと思いますね。そうすれば筋肉は鍛え、無駄な体脂肪を落としてそぎ落とした美しい肉体同士の格闘が楽しめるのだと思うのです。
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石印材を鑑定する 中編

2023年12月18日 | 篆刻
昨日掲載した写真の石の鑑定、というか値踏みをいたしたいと思うのです。

石印材に限らず、骨とう品や貴重品の鑑定の最も重要な要素・ポイントは本物かどうか、であります。石印材に限って言えば、側款や友箱に「作者名(印を彫った人の名前)または石印材に美しい「紐・薄意」を施した名人の名前がある場合の評価・鑑定と、未刻印であっても石そのものの美しさや希少価値で鑑定する、という要素が加わります。紐や薄意の名人作家と言えば「秋堂」さんが有名で、立派な台付き、木箱入りの田黄石にはよくこの「秋堂」という文字が刻まれています。

そこで、そうした細工や署名が偽装される贋作が大量に生み出されているのです。明清の時代の中国の篆刻家ならば、呉熙載・趙之謙・文彭、呉昌碩さんなどが思い浮かびます。もっと遡れば米芾(べい ふつ)さん近年では斉白石なども超有名であります。そうした人の真作ならばとんでもない価値があるのですから、それの偽物を作ろうという人が無数にいるのが中国であります。
また、石の新旧は石そのものが数億年にわたって組成されたものなので、何百年程度では全く石そのものに変化はありません。しかし、その採掘・採取された時代が古いほどまたそれが希少であるほど「銘品・美品」で高価値になるのです。従って、石が世に出た時代によってその評価は大きく変わっていくのです。

そこで、偽物をどう見破るか?が決め手になるのですが、はっきり言って経験と総合的な判断としか言えません。例えば友箱、これが印に合わせて当初から作られているか、それに貼られた布地がいつの時代のもので、絹地か否か、どんな紋様の織かなどを観ます。また、経年相当の汚れや色褪せなども検討材料になりますね。時代を感じる木箱・塗のある箱などに入っているのは本物の可能性が高いです。但し、「寿山石章」とか「西冷印社」とかなんとか表書きのある黒などの塗の木箱は「お土産ものレベル」と思った方がいいですね。

専用の箱に入っていない場合には、側款の彫った文字が、有効な判断材料です。きちんと一刀できりりとした線が引かれて、その作家のくせや書き様に合致するかなどを調べます。白や朱・薄い緑色の塗料が文字に埋められていたら近世のものです。
紐などもよく見ると、パートのおばさんが細かい電気ドリルで流れ作業で作ったものと、丁寧に手造りしたものでは全く価値が違いますし、子細に観察すればそのくらいのことは分かります。

まず中島藍川先生の側款・説明文がある印
これは非常に丁寧に作られた「印材の紐(馬)」の形まで想定して作られた専用の箱であります。ビロードが内側に貼られていて馬の向きまで計算して作られています。4,50年ほど前の商品ではないかと思いますね。
石自体は印材4宝と言われるような種類ではなく、切り出した山坑の「寿山石系の微凍石」ですが、なにより馬の彫刻が美しい造形であります。こうした一流品の印材は、恐らく販売価格は、物価が安かった当時でも5千円前後はしただろうと思います。入手は、石の生産・掘削している中国の現地ではなく、中国都市部か、輸入されて日本の書道・篆刻用品専門の店だったかもしれません。

中島藍川先生は、写真にあるごとく1958年日展に初入選、特選を2度受賞後審査員などを経て、 篆刻連盟の会長まで務め、2018年2月に物故されています。ここ半年ほど先生の公募展への受賞作の「元石」がヤフオクによく出品されています。その落札額はおよそ5万円~10万円というところでしょうか。3回忌を過ぎて、恐らく遺族の方や関係者がまとめて処分している、と想定すれば偽物は少なかろうと思います。中国人が関与してはいないでしょうし(笑)。
関係した過去の記事のひとつがコレであります。

今回の落札品は、書道をやっている方が藍川先生に彫って貰った「雅印」で、それがまた人手に渡ったあとにヤフオクに出たのであろうと思います。これは本物だろうと思います。落札額は4,500円でありました。石・印箱代だけで、十分元が取れる金額ですが、これが藍川先生作であるならば、軽く1万円以上する、で良かろうと思います。

さて、もう一つの石ですが今日はこれまで。後編は後日ということでご容赦願います。

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石印材の鑑定 その要諦前編

2023年12月17日 | 篆刻
昨日ワタシの仕事場を訪ねてきたのは、高校生の時の同級生であります。50年前にそれぞれの道へ進んで、つい最近までは全く会う機会どころか名前さえも忘れていたような疎遠な間柄であったのです。中高大生の時代を通じて、その数%も付き合いが無くなるというのが普通のパターンではなかろうかと思います。

彼は、長く花形産業の損保業界にいて、数年前から自営業とか非正規のアルバイト程度の仕事をしている、と聞きましたがどちらかと言えば生活費を稼ぐのではなく、じっとしていられない性格なのでしょう。彼の用件は、ワタシに篆刻印を彫ってくらないか、という依頼でありました。Facebookなどでワタシの彫った印を見て、欲しくなったようです。別に書道をしている風は無いのですが、剣道はなかなかのもので高校の時も剣道部だったのです。

雑談の中で、ご尊父が日本刀の蒐集をしていて10振りほどの刀を残して他界されたのだそうです。その時、何も知らない彼は処分に困って骨董商に見てもらって売ったのだそうですが、その値段が2千円~2万円ほどだったとか。お父さんは10万円で落札したという名刀らしきものも含まれていたらしいのですが。

ワタシも石印材の蒐集家として痛感するのは「集める対象の事を熟知している、知識が上であることが圧倒的な価格交渉の決め手になる」ということです。ネットで調べ、多くの古文書・書物を読み漁り、実物を手にする。そして物の価値を様々な取引や所有・研究・失敗などを通じて経験値を重ねる中で「品物」の本来の価値を値踏み・鑑定できることが、実際に売買する時の最大の交渉手段となるのです。ワタシもずいぶんと授業料は払いましたよ。

さて前置きはこの程度にして、直近で入手した印と入札してとんでもない落札があった出品物を紹介いたします。
まずびっくりした高値がついた「梅舒適 」先生旧蔵という謳い文句の「印材まとめて10点」です。




これらは、みるからに美しく価値が高いと思える品物でしたから、ワタシもウオッチをつけていたのです。ウオッチは時計ではなく、出品物に自分で入札することを前提にして注視するためにマークを付けることであります。しかし、最終期限の夕方には既に6万円を超える札が入っていたので、本当にウオッチするだけで早々に諦めました。そして翌朝見たら、落札額が97万円!!!
これにはビックリ。ワタシが見てきた中ではこの手の出品物では最も高額になったのです。つまり、戦後篆刻家としては第一人者であった梅先生が、大事に集めた逸品中の逸品と見て一個当たり9万円の値段がついたのです。真贋は不明なのです。また手に取ってみる訳にもいかない写真10枚とわずかな説明文だけなのですよ。従って、本物と確証が得られれば(例えば鑑定書付)、その倍くらいの値段がつくかもしれないのです。

印材の鑑定や価値は、実は集める人の主観や目の付け所で変わってきます。紐や薄意(石に施す飾り彫)の出来・石の種類(田黄や芙蓉石など名坑の名石か)・見た目の美しさや透明感・石に彫られた側款や印面の彫・その印材の作者や所有者が誰か・時代(経年数)は、といった要素のうち人によって優先順位が違い、値決めも当然違ってくるのです。梅先生のことだからそれらのほとんどの要素を高いレベルで満たしているに違いない、と思った蒐集家が高額の入札に応じたと思われます。

現実的にも、高名な篆刻家先生に立派な書道家さんやお金持ちの書道愛好家さんが印の依頼をするとき、「お金には糸目をつけなかった」はずなのです。そして、彫る側からしたら当然①手作りの見事な紐や薄意つき ②名石と言われるもののほとんどは均質で彫りやすく壊れにくい ③貴重な石であればあるほど依頼者は喜ぶ といった観点から高級かつ良質な印材を選ぶに相違ありません。

従って、印材4宝といわれるような高級石≒ 表面が磨かれ美しい飾り彫≒ 名人の手になる=一級の印面の彫(これが最も重要)といった共通点に近いものがあります。わかりやすく言えば売値が高い印は中古品になってもやっぱり高い、プレミアもつく、という理屈になるのです。

ですから、ワタシはヤフオクでウオッチをつけ、実際に落札まで追いかける石は、前提として中古品(彫りがあって側款あり)を優先します。ワタシが知っている位の名人が彫ったということが確証を持てれば、自ずと価値の高い石を使ってるはずだと。

今回2件、1週間で落札できました。
一つは「中島藍川」先生の作品

もう一つは「寿石刻」の側款入り印であります。

予定稿に達しましたので続きは後編(明日)をお楽しみに
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