(11月8日)島倉千代子死去
肝臓癌の為、75歳で亡くなる。
かつて国民的歌手とまで言われたそうだが、世代が違うのでその点に関してはピンと来ない。
この訃報に接して思ったことはふたつ。
まず、小田さん(小田和正さん)の心にはどんな感情が広がっただろう、ということ。
小田さんが若い(幼い)頃、正に大スターであった彼女は特別な存在だったらしく、かつて自身が司会を務めるTBS深夜の音楽番組でゲスト出演してもらったことがあり、更に遡れば、1995年に『あの頃にとどけ』という楽曲を提供もしている。
当時は小田さんにとって島倉千代子という存在がどういう位置を示すのか、殆ど知らなかったので、このプロデュースは意外且つ新鮮で、小田さんの音楽遍歴の一端を垣間見た思いがした。
今回、小田さんは特にコメントを寄せてないが(そういうタイプの人でもないし)、この訃報には何か思うところがあっただろうと想像される。
そして、ふたつ目。
14日に青山葬儀所で行われた葬儀・告別式で、亡くなる三日前に録音された生前最後の肉声が流され、参列者の涙を誘ったが、あれを聞いてある種の既視感に、僕は襲われた。
2011年4月21日に乳癌の為女優の田中好子さんが55歳で亡くなったが、その四日後に(島倉さんと同じ青山葬儀所で)営まれた告別式で、同様に生前最後の肉声が会場で流された。
その日参列した僕にとって、それは何と言えばいいか今なお表現しづらい、忘れ難い「声」だった。
島倉さんのファンの方々の気持ちが、痛いほど僕には分かる。
あの「重さ」は、予告なくその場で耳にした者にしか分からない。
最後の肉声は、デビュー60周年に向けての記念曲をレコーディングした後に録られたという。
当初11月15日に録音予定であったが、「その日まで待てない」という島倉さん本人からの連絡で急遽実現したそうだ。
自らの最期が、島倉さんにはもう見えていたのだろうか……。