フランスの原子力コンツェルンであるアレヴァ社はフラマンヴィーユ原発やイギリス・ヒンクリーポイント原発建設の大幅な遅れや、ウラン鉱山投資の失敗などで2014年度は48.33億ユーロ、2015年度は20.38億ユーロの損失を2年連続で出しており、殆ど国営だから倒産していないだけの企業です。フランス政府の指示で、アレヴァの原子炉部門は来年フランス電力(EDF)が引き取ることが決まっており、リスクキャピタルとして約170億ユーロが同社のバランスシートに計上されています。
この度アレヴァ社がファイナンス問題ばかりか品質管理にも問題があったことが発覚しました。昨年建設中のフラマンヴィーユ原発の原子炉圧力容器の底とドーム部に異質な成分が発見されたことがきっかけで、原子力安全局の要請により品質管理監査が実施されました。その際に鍛造工場クリュソ・フォルジュ(Creusot Forge)で約400部品に関する製造記録に製造パラメータやテスト結果の不整合、改竄、脱落があったことが分かりました。問題となっている400部品の半分以上が原子炉関係部品で、残りはその他の発電所関連部品。フランス原子力安全局が5月3日、火曜日に発表したところによると、問題のある400部品のうち50部品はフランスの原発に現在使用されているとのこと。
これらの部品は比較的大きく、交換はほぼ不可能。原子炉を止めざるを得なくなる可能性があるため、現在不良部品の原発安全性への影響を調査中です。アレヴァ社は、製造記録を1960年までさかのぼって1万件に及ぶ書類を調べているとのこと。どの書類にも鉄鋼の正確な化学組成から高温処理、鍛造工程まで記されているという。
アレヴァ社は鍛造工場クリュソ・フォルジュを2006年に買収し、昨年1億ユーロそこに設備投資したばかりです。現在ではこのような不整合性は起こり得ないと同社は主張していますが、実際のところはどうだか疑問です。
不正が発表された5月3日、アレヴァ社の株価は7.4%下落しました。暴落しても良さそうなものですが、過去3年間で約63%下落して4ユーロ代になっているので、もう今更慌てて売りに走る投資家が居ないのでしょうね。国が大株主ですから。
原子力は結局国の援助、すなわち納税者の負担なしには成立できない産業です。赤字を垂れ流し、汚染をまき散らし、10万年も安全に保管しなければならない途方もない廃棄物を出し続け、何が経済効果?と疑問に思わざるを得ません。オランド仏首相は一応原発依存度を削減する方向に舵を切りましたが、なんだか中途半端なところでまた揺らいでいる感じです。そんなに核保有国として威信を保つことが重要なのでしょうか。
参考記事:
アレヴァ社プレスリリース、2016.02.26、「ファイナンスレポート」
ハンデルスブラット、2016.05.03、「アレヴァの原発パーツに欠陥の可能性:偽造文書スキャンダル」
フランクフルター・アルゲマイネ、2016.05.03、「原発に怪しげな部品50個」