徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第十二幕』(富士見L文庫)

2020年12月16日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行


『紅霞後宮物語』の最新刊が出たので、読みかけのちょっと重たい本を横において、さーっと一気読みしました。ライトノベルのいいところはこれですよね。短時間、違う世界にどっぷり浸って、また戻って来れるお気軽さ。

さて、第十二幕では、小玉が新しい妃・茹仙娥の陰謀により後宮の最下層・冷宮に落とされてから、もろもろあってそこを出るまでの経緯が描かれています。

茹仙娥のバックグラウンドや、彼女が本当に文林の子を懐妊したのかどうかなどという陰謀の本筋が明らかにされるほか、冷宮の実態や不正、そしてそこでの小玉と因縁のある人との出会いなども語られています。世の中は意外と狭い。

文林と小玉の関係もわけが分からないままですが、ラストで小玉が二人が過去に関係を持った際に妊娠して流産した可能性はほとんどないことを主治医に確認を取ったと割と軽く伝え、それに対して文林が「お前はずっとそのことを抱えていたんだな…1人で抱えていたんだな」「すまなかった」と謝り、そこで小玉がただ涙した、というシーンがジーンと来ましたね。
予期せぬところで自分がどこか負担に思っていたことを深く理解され労わってもらえると、言葉を失って思わず涙してしまうものですよね。
珍しくとても共感したワンシーンでした。