今続編の『八雲立つ 灼』が連載中で、数日前に2巻を買って読んだばかりで、因縁のありそうな謎の人物が登場したので、元祖『八雲立つ』の方に何かヒントはないかと気になり出して、10巻全部読み返してしまいました。
『八雲立つ』は1992~2002年にララで連載していた作品で、古事記や出雲風土記などの世界を現代に蘇らせたような漫画のため、その設定や世界観が割と入り組んでいます。七地健夫(21)が主人公と言えるのかどうかちょっと微妙なところですが、取り敢えずこのさえない男が自分の家に伝わる剣を、部活の一環で古代出雲族の取材に行くついでに剣の神であるという経津主神と素戔嗚尊を祀る神社に奉納しに行くところから話が始まります。その先で古代出雲族の末裔であり、代々巫覡(シャーマン)としてその地の神事を行い、結界を守ってきた布椎(ふづち)家の若い当主闇己(くらき、16)と運命的な出会いをします。実はこの二人の前世は大和朝廷に国譲りする前の出雲族の巫覡であったマナシ(真名志)と彼のために神剣を鍛えた鍛冶師のミカチヒコ(甕智彦)で、その強い絆が現代に蘇るという設定です。初回では七地の夢に一瞬だけ前世のワンシーンが出て来るだけですが、3巻から徐々に古代編として真名志とミカチヒコの物語が展開します。現代の方では、布椎家に伝わる6本の神剣のうちの盗まれた5本を見つけ出し、結界に閉じ込めてある「念」を一度開放して昇華するため、七地が闇己に協力することになります。言い伝えによればミカチヒコの血統の者のところに神剣は帰ってくるとのことだったので。
闇己は実は先代当主の息子ではなく、その先代当主の妻・瀬里とその弟の真前(まさき)との間の子どもで、先代当主からすると甥にあたります。母の瀬里は真前と一緒に逃げて行方不明になっており、闇己は先代当主の実の息子として育てられた、というかなり重い事情を背負っています。ただでさえ旧家の当主としての重圧もあるのに、巫覡としての能力も桁外れで、しかも体質的に負の巫覡、つまり負のエネルギーと言える「念」を体内に飼い慣らし、使役することもできるという闇をかかえています。かなりしっかりした高圧的・威圧的なところもありますが、こころの弱さもあり、お人好しの七地に癒されている感じです。
七地と闇己は、布椎家とは別に神剣を集めている勢力や東京で念を活性化させている勢力に対抗しながら、神剣と力のある巫覡を集めていく展開です。
こういう古代世界を現代に持ち込むファンタジーは、結構好きです。樹なつみの絵柄もきれいで私好み