みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0479「恋愛ゲーム」

2019-03-05 18:27:35 | ブログ短編

「これはゲームよ。本気(ほんき)じゃないの。そこんとこ、間違(まちが)えないでね」
 彼女は彼に言った。――彼女はちょっと素直(すなお)じゃないところがある。自分の気持ちを打ち明けることが苦手(にがて)なのだ。だから、よく誤解(ごかい)されたりしてしまう。
 彼はしばらく考えてから、「で、俺(おれ)は何をすればいいんだ?」
「別に難(むずか)しいことじゃないわ。私と一緒(いっしょ)に歩いたり、おしゃべりしたり。普通(ふつう)のカップルがするようなことをしてくれるだけでいいの」
「でもなぁ、俺(おれ)たち恋人(こいびと)じゃないんだから…。それに、知ってるヤツに会ったら――」
「私と一緒だと嫌(いや)なの!? 私って、そんな、恥(は)ずかしい女ってこと?」
 彼は慌(あわ)てて、「いや、そういうことじゃなくて。何て言うかな…」
「分かったわ。じゃあ、こうしましょ。デートは、知ってる人がいない遠い場所でするの。そこへ行くまでは、私たちは別行動(べつこうどう)よ。それなら、いいでしょ?」
「まあ、それなら…。でも、いつまでやるんだ?」
 彼女は急に黙(だま)り込んだ。そして俯(うつむ)きながら小さな声で、「それは、あなたが私のこと…」
 彼は不意(ふい)に言った。「じゃあ、お互(たが)い好きな相手(あいて)が見つかるまでってことで、いいかな?」
 彼女は一瞬(いっしゅん)びくりとしたが、「…そ、そうね。そうしてくれると、助(たす)かるわ」
<つぶやき>さあ大変(たいへん)だ。彼が好きになってくれるような、そんなデートをしないとね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする