みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0482「ダッシュ!」

2019-03-08 18:49:42 | ブログ短編

 会社の昼休み。トイレで雑談(ざつだん)をしながらメイク直(なお)しをしている二人。そこへ、息(いき)を切らして駆(か)け込んで来た人がいた。二人は鏡(かがみ)に映(うつ)ったその人を見て驚(おどろ)いた。それは、いつも沈着冷静(ちんちゃくれいせい)な憧(あこが)れの先輩(せんぱい)。それが、どうして…。先輩は息を整(ととの)えながら、
「別に、何でもないのよ。ちょっと、あれで……ね」
 こうなると誰(だれ)でも気になるもの。二人は先輩に根掘(ねほり)り葉掘(はほり)り聞いてみた。すると先輩は、言いにくそうに打ち明けた。「実(じつ)は…、チョコを渡(わた)してきたのよ。それで…」
「ああ、バレンタインですか? でも、それって先週(せんしゅう)でしたよね」
 先輩は二人から目をそらして、「私ってそういうのこだわらないのよ。別にいいじゃない」
「で、どうだったんですか? ちゃんと受け取ってもらえたんですか?」
「先輩が好きになった人って誰だろ。あたし達の知ってる人ですか? 教えてください」
 後輩(こうはい)の二人は興味津々(きょうみしんしん)の様子(ようす)。先輩は首(くび)を傾(かし)げながら、
「まあ、一応(いちおう)、受け取ってくれたと言うか…。押(お)しつけちゃった、みたいな…」
「えっ? まさか、返事(へんじ)も聞かずに逃(に)げできちゃったんですか? うそッ。今時(いまどき)の女子高生だって、そんなことしないですよ」
「だって、わたし、こういうの苦手(にがて)なの。もう何も訊(き)かないでよ」
<つぶやき>いくつになっても乙女心(おとめごころ)は必要(ひつよう)です。でも、社内で噂(うわさ)になっちゃうかもね。
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