食卓(しょくたく)についた神崎(かんざき)つくねは、山盛(やまも)りの料理(りょうり)が並んでいるので驚(おどろ)いて目を丸(まる)くした。
月島(つきしま)しずくは呆(あき)れて母親に囁(ささや)いた。「何なの、これ。こんなに作っちゃって…」
母親はそんなこと気にもかけずに、「だって、あなたが友だちを連れて来るなんて考えてもみなかったんだもん。もっと早く連絡(れんらく)してくれれば、美味(おい)しいもの作ってあげたのに」
父親がさり気なく口を挟(はさ)んだ。「まあまあ、いいじゃないか。で、神崎さんは、その…。そういう格好(かっこう)が、今の流行(はやり)なんですかね。おじさんには、どうも理解(りかい)できないが…」
最初の出会いが寝巻(ねまき)姿である。疑問(ぎもん)を持つのは至極当然(しごくとうぜん)とは言える。つくねは、「ええ、まあ…」と曖昧(あいまい)に返事(へんじ)を返した。まさか、変な人に狙(ねら)われているとは、とても言えない。
いつもならすぐに自分の部屋へ行ってしまう弟(おとうと)が、今日はやけに静(しず)かに座っている。彼の目は、つくねにくぎ付けになっているようだ。しずくは弟の頭をひっぱたくと、強い口調(くちょう)で言った。「変な目で見ないの。食べ終わったらさっさと行きなさいよ」
それを見たつくねは、「ダメよ。そんなことしたら、可哀想(かわいそう)だわ」と、可愛(かわい)いキャラを全開(ぜんかい)にする。子供たちのやり取りを、微笑(ほほえ)ましく見ていた母親がつくねに声をかけた。
「今日はもう遅(おそ)いから、泊(と)まってらっしゃい。ねえ、いいでしょ?」
「でも、ご迷惑(めいわく)じゃ…」つくねは伏(ふ)し目がちに答えた。
「いいのよ。そんなこと気にしなくても」母親は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>月島家はとってもアットホームなんです。つくねはちょっと戸惑(とまど)ってます。
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