みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0489「誰かいる」

2019-03-16 18:27:21 | ブログ短編

 彼女はおびえていた。ここ一週間、誰(だれ)かに見られているような…。職場(しょくば)の先輩(せんぱい)に話したらこう言ってくれた。「俺(おれ)が送ってってやるよ。俺の家、君んとこの近くだからさ」
 その日は、先輩に送ってもらった。不思議(ふしぎ)なことに、今夜は誰かにつけられている気配(けはい)はなかった。家の前に着くと先輩は、「明日も迎(むか)えに来てやるよ。一緒(いっしょ)に会社へ行こう」
 ――彼女はお風呂(ふろ)へ入りながら先輩のことを考えていた。先輩って意外(いがい)と優(やさ)しい人なんだ。でも、ふと妙(みょう)なことに気がついた。先輩って、何で私の家のこと知ってたんだろう?
 その時、風呂場の外から物音(ものおと)が聞こえた。誰かが外にいる。彼女は恐怖(きょうふ)のために身体(からだ)をこわばらせた。彼女はそっと風呂から出ると、バスタオルを身体に巻(ま)いて風呂場の扉(とびら)を開けた。そこからはリビングの半分くらいが見渡(みわた)せる。誰もいない。それでも彼女は足を忍(しの)ばせてリビングへ向かった。やっぱり何もない、気のせいだったんだ。
 彼女はホッとして、キッチンの方へ振(ふ)り返って愕然(がくぜん)とした。テーブルの上に、包丁(ほうちょう)を突(つ)き立てた肉(にく)の塊(かたまり)があったのだ。彼女はその場にしゃがみ込(こ)んだ。その時だ。オーデコロンの匂(にお)いが彼女の鼻(はな)をついた。この匂い…、先輩がつけてたオーデコロンと同じ匂いだ。
 その夜、彼女は一睡(いっすい)もできなかった。夜が開けると、先輩が迎えに来たのか玄関(げんかん)のチャイムが鳴(な)った。彼女はフラフラと立ち上がると、肉に突き立ててあった包丁をつかんで、まるで夢遊病者(むゆうびょうしゃ)のように玄関の方へ歩いて行った。
<つぶやき>本当に先輩が犯人(はんにん)なのでしょうか。この後、彼女が何をしたのか、恐(こわ)いです。
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