みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0493「サイン違い」

2019-03-21 18:24:37 | ブログ短編

「あたし、そんなこと言ってないよ」
 彼女は驚(おどろ)いた顔をして言った。「だって、あなたのこと好きじゃないし…」
 彼女の口からそんなことを聞かされるなんて。男は気が動転(どうてん)してしまった。
「でも、僕(ぼく)のこと頼(たよ)りにしてるって…。大切(たいせつ)な人だって言ってくれたじゃないか。それに、君の部屋にだってこうして入れてくれてるし。僕たち恋人(こいびと)――」
 彼女は一歩後(あと)ずさりして、「何でそうなるの? あたしはただ、コードの配線(はいせん)とか、あたしのできないことしてくれるからで…。だから大切な人なの。別に好きとか、そういうんじゃないから。もう、勘違(かんちが)いしないでよ。あたしたち、友達(ともだち)でしょ」
 男はまったく納得(なっとく)できなかった。彼にしてみれば、彼女が<好きですサイン>を出しまくってるとしか思えなかったのだ。男は彼女へ詰(つ)め寄ろうとしたが、彼女が機先(きせん)を制(せい)して、
「あたし、あなたはとっても良い人だと思ってるのよ。優(やさ)しいし、親切(しんせつ)だし、困(こま)ってる人がいたらほっとけないでしょ。だから、あたしも、いろんなことお願いしちゃって…」
 男はもどかしそうに、「でも、僕は…。僕の気持ちは…」
「イヤだ。変なこと考えないで。あたし、あなたはそんなことしない人だと思ってるのよ。だって、女性に興味(きょうみ)なんてないんでしょ。だから、あたしも…」
 男は両手(りょうて)で彼女の腕(うで)をつかんで、「僕は、男です。男なんだ。男として見てください」
<つぶやき>好きですサインの使い方には十分注意(ちゅうい)しましょう。誤解(ごかい)をまねかないように。
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