みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0485「しずく12~振り返らない」

2019-03-12 18:40:02 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくは一瞬(いっしゅん)凍(こお)りついた。人が殺(ころ)されるなんて、ニュースでは聞くけど。しずくは、つくねに何て言ってあげればいいのか分からない。でも、神崎(かんざき)つくねは平気(へいき)な顔で言った。
「別に気を使わなくてもいいわよ。もう過去(かこ)のことだから。あたしは過去は振(ふ)り返らないようにしてるの」
「でも…。それじゃあ、一人っきりなの? 兄弟(きょうだい)とか…」
「叔母(おば)さんが一人いるみたいなんだけど、どこにいるのか分かんないんだよね。あたしは、叔母さんには一度も会ったことないから、捜(さが)しようがなくて…」
 つくねは、悲(かな)しそうな顔をしているしずくを見て、「やだ、可哀想(かわいそう)だなんて思わないでよ」
「そんなんじゃ…。私がなってあげるよ」つくねは唐突(とうとつ)に言った。「あなたの友達(ともだち)に!」
 つくねは少し驚(おどろ)いた顔をしたが、クスッと笑(わら)って、
「そんなこと言ってくれたの、あなたが初めてよ。ありがとう。でも…」
 つくねは言葉(ことば)を呑(の)み込んだ。しずくはそんなこと気にもかけないで部屋の中を見回して、
「ねえ、どうしてこんなとこに住(す)んでるの? すぐにでも壊(こわ)れちゃいそうなのに」
「ああ。ここ、もうじき取り壊(こわ)されるのよ。それまでの間、タダで使わせてもらってるの」
「えっ! でも、ここが無(な)くなっちゃったらどうするのよ」
 つくねは、本気(ほんき)で心配(しんぱい)しているしずくを見ておかしくなった。こんな娘(こ)がいるなんて…。
「そしたら、また他(ほか)を探(さが)すわ。そういうのには慣(な)れてるから」
<つぶやき>強い心がないと前を向いて進むことは難(むずか)しい。二人は友達になれるのかな?
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