みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0499「いちかばちか」

2019-03-27 19:15:28 | ブログ短編

 亜希(あき)が、教室(きょうしつ)にいた洋子(ようこ)を呼(よ)びに来た。洋子はちょうどお弁当(べんとう)を食べ終わったところで、キョトンとした顔で、「行くって、どこへ? あたし、これから――」
「今がチャンスなの」亜希は洋子の耳元(みみもと)で囁(ささや)いた。「山田(やまだ)くん、一人で屋上(おくじょう)にいるから」
 洋子は急に頬(ほお)を赤らめておどおどしながら、「山田くんって…。あたし、そんな…」
「もう、山田くんのこと好きなんでしょ。みんな知ってるわよ」
 洋子が顔を上げると、周(まわ)りにいた同級生(どうきゅうせい)たちみんな、一斉(いっせい)に頷(うなず)いた。洋子はますます恥(は)ずかしくなり、すっとんきょうな声を上げて、「ち、違(ちが)うわよ。あたし、あたしなんか…」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。山田くん、今、誰(だれ)とも付き合ってないんだって。これは確(たし)かな情報(じょうほう)よ」
「でも、だからって…。あ、あたしのことなんか――」
「そんなこと、コクってみなきゃ分かんないでしょ。いちかばちかで、当たって砕(くだ)けちゃおうよ。そんなんだから誰とも付き合えないんだよ」
「でも、当たって砕けちゃったらダメでしょ。あたしは、別にこのままでも…」
 尻込(しりご)みしている洋子を、亜希は強引(ごういん)に引っ張って屋上へ向かった。屋上では山田くんがぼんやりと空を眺(なが)めていた。亜希は洋子の背中(せなか)を押(お)して山田くんの前へ行くと、
「山田くん、洋子が話があるんだって。聞いてあげてよ」
 洋子は山田くんに見つめられて、ますます顔を赤くしてうつむいてしまった。
<つぶやき>ちゃんと告白できるのかな。でも、どうして山田くんは屋上にいたのでしょ?
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