みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0491「せつない恋」

2019-03-18 18:57:18 | ブログ短編

 友達(ともだち)が開くパーティに誘(さそ)われた。行ってみると、そこには僕(ぼく)の憧(あこが)れの彼女も来ていた。でも、彼女は僕のことなんか気にもとめない。彼女は羽生(はにゅう)のことしか目に入らないのだ。今日も羽生と彼女は二人並(なら)んで、楽しそうに飲んでいた。僕は二人の後ろ姿(すがた)をときどき垣間(かいま)見ることしか…。
 その時だ。羽生が僕の方を見て手招(てまね)きした。僕が首(くび)を傾(かし)げながら近づくと、僕を自分が座(すわ)っていた席(せき)に座らせて言った。「あと頼(たの)むよ。俺(おれ)、ちょっと行くとこがあってさ」
 羽生はそのまま帰ってしまった。僕は、困(こま)った。彼女の横に座るなんて…。もう心臓(しんぞう)はバクバクで、彼女の方を見ることもできない。突然(とつぜん)、彼女が僕にしなだれかかってきた。僕の身体(からだ)は硬直(こうちょく)し、思わず彼女の顔を横目(よこめ)でチラリ。彼女の顔をこんな間近(まぢか)で見たことなんか…。わぁ、可愛(かわい)い…。って、言ってる場合(ばあい)か?
 彼女はどうやら酔(よ)っ払っているようだ。目はとろんとして、口元(くちもと)がわずかに微笑(ほほえ)んでいる。そして、彼女は僕にささやくのだ。いや、僕にではない。羽生にだ!
「今日は、帰りたくないなぁ…」
 僕は涙(なみだ)が出そうになった。彼女への思いが吹(ふ)き出しそうになるのを必死(ひっし)でこらえた。彼女だって気づいているはずだ。羽生が、彼女のことなんか何とも思ってないことを。今だって、あいつは付き合ってる恋人(こいびと)のところへ向かっているのだ。
 僕は彼女の肩(かた)にそっと手をやる。彼女の閉じた瞳(ひとみ)から、ひとすじ涙(なみだ)がこぼれた。
<つぶやき>恋は思い通りにはいかないもの。そんな時は一歩退(ひ)いてみることも必要(ひつよう)かも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする