みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0564「海賊島1」

2019-06-06 18:37:11 | ブログ短編

「宝(たから)探(さが)しなんて、俺(おれ)、聞いてねえぞ」
 林田(はやしだ)は大きな荷物(にもつ)を抱(かか)えて言った。林田は体格(たいかく)は立派(りっぱ)で体力(たいりょく)もあるのだが、ちょっと頭の使い方を知らないタイプだ。島(しま)の地図(ちず)を見ながら、伊集院(いじゅういん)が言った。
「文句(もんく)を言うなよ。タダで連れて来てやったんだ。きっちり仕事(しごと)はしてもらうからな」
 少し離(はな)れたところで奇声(きせい)をあげたのは、久美子(くみこ)である。
「わ~あ! 海、きれい! ねえ、見て。早く泳(およ)ぎに行こうよ」
 彼女は宝探しにはまったく興味(きょうみ)はないようだ。彼女がなぜついてきたのか、よく分からない。伊集院の恋人(こいびと)というわけでもないようだ。謎(なぞ)の女である。が、今どきの娘(こ)なのか、きゃぴきゃぴと、どことなく愛嬌(あいきょう)がある。伊集院は久美子に叫(さけ)んだ。
「何してんだ! 俺たちは、観光(かんこう)に来たんじゃないんだぞ。海なんてもってのほかだ」
「えっ! なんで? あたし、南の島だって聞いたから、水着(みずぎ)持って来たのに。いま流行(はやり)の、超(ちょう)かわいいやつなのよ。こんな、ビキニなの。ビキニ…」
 久美子は手を使って説明(せつめい)するのだが、伊集院はまったく気にもとめなかった。今は女より、宝のほうに目が向いているようだ。伊集院はさっさと歩きながら言った。
「こっちだ。民宿(みんしゅく)に着いたら、すぐに明日からの準備(じゅんび)をするからな――」
<つぶやき>南の島で宝探しなんて、ロマンです。これからどんな冒険(ぼうけん)が始まるんでしょ。
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