みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0568「海賊島4」

2019-06-11 18:35:54 | ブログ短編

 伊集院(いじゅういん)の話をかいつまむと――。幕末(ばくまつ)の頃(ころ)、この島(しま)に異人(いじん)たちが上陸(じょうりく)したことが古文書(こもんじょ)に残(のこ)されていた。彼らは、大きな箱(はこ)をいくつか運び込んだと書いてあったが、島民(とうみん)たちは恐(こわ)がって誰(だれ)も彼らと接触(せっしょく)することはなかったようだ。彼らがその後どうしたか、まったく記述(きじゅつ)は残されていなかった。
 伊集院が長々(ながなが)としゃべっているあいだ、他の二人は民宿(みんしゅく)のおばちゃんが持たせてくれたおにぎりを頬張(ほおば)っていた。それに気づいた伊集院は、
「お前ら、何やってんだ。俺(おれ)が重要(じゅうよう)な話をしてるのに――」
 林田(はやしだ)は口をもぐもぐさせながら、「お前の話はつまんねえよ。それよりお前も食べるか?」
 林田は最後(さいご)のおにぎりをつまんで、伊集院のほうへ差し出した。伊集院は、
「ちょっと待てよ。俺の分は…。お前ら、みんな食べちまったのか?」
 久美子(くみこ)がお茶(ちゃ)をゴクリと飲みほして言った。「だって、自分の世界(せかい)にどっぷりとつかってるんだもん。やっぱ、伊集院て超(ちょう)オタクなんだね」
 伊集院は林田の手からおにぎりをもぎとると、口の中へ押(お)し込んだ。久美子は呆(あき)れて、
「やだ、そんな食べ方するなんて。身体(からだ)によくないよ」
 伊集院は口の中のご飯(はん)を辺(あた)りにまき散(ち)らしながら言った。
「うるさい! 俺はオタクじゃないって言ってるだろ。今度その話を蒸(む)し返したら――」
<つぶやき>食事(しょくじ)はゆったりとした気分でとりましょ。ガツガツするのはよくありません。
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