みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0583「海賊島15」

2019-06-27 18:37:28 | ブログ短編

「あのさ、ちょっと黙(だま)っててくれないかな。俺(おれ)は久美(くみ)ちゃんと…」
 リーダーは伊集院(いじゅういん)に向かって言った。伊集院は両手(りょうて)を上げてそれに答える。この頃(ころ)には、リーダーの後ろの方に若者(わかもの)たちがぞろぞろと姿(すがた)を現(あらわ)していた。
 伊集院は、彼らに向かって叫(さけ)んだ。「オイ、君(きみ)たち! ちょっと手伝(てつだ)ってくれないか。ここを平(たい)らにしたいんだ――」
 伊集院はそう言いながら、若者たちの方へ歩いて行った。残(のこ)された林田(はやしだ)は、久美子(くみこ)と見知らぬ男の顔を見比(みくら)べて…。いくら林田でも、ここにいちゃいけないことは理解(りかい)したようだ。伊集院の後を追(お)いかけて駆(か)け出した。久美子はスコップを手に取ると砂(すな)をかきながら、
「ねえ、ケンちゃん。約束(やくそく)、覚(おぼ)えてる? あたしがこの島を出るとき…」
「もちろん、覚えてるさ。だから、この島で待ってたんじゃないか」
「うそよ。じゃあ、これはなに?」久美子は砂浜(すなはま)を見渡(みわた)して、「こんなにしちゃって…。あたし、言ったよね。戻(もど)ってくるまで、この美しい島を守(まも)ってねって。それなのに…」
「それは…。でも、この島を守るには金がいるんだ。金を稼(かせ)ぐには――」
「それは分かるけど、あなたのやり方じゃ…。全然(ぜんぜん)、ダメでしょ!」
 伊集院は、離(はな)れた場所(ばしょ)から二人の様子(ようす)を見つめていた。林田が呟(つぶや)いた。
「あの二人、どういう関係(かんけい)なんだ? お前、いいのかよ。二人だけにして」
「だから、俺とあの娘(こ)とは何の関係もない。何度も言ってるだろ。いい加減(かげん)――」
<つぶやき>何かをなしとげるためには努力(どりょく)が必要(ひつよう)だよね。でも、やり方を間違(まちが)えると…。
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