みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0575「しずく30~胸騒ぎ」

2019-06-19 18:33:36 | ブログ連載~しずく

 教室(きょうしつ)の自分(じぶん)の席(せき)に座(すわ)って、神崎(かんざき)つくねはぼんやりと空(そら)を眺(なが)めていた。こんな風(ふう)にのんびり空を見ているなんて…。つくねは、ハッと我(われ)に返った。その時だ。
「ねえ。しずく、どうしたのかな。今日は遅(おそ)いよね。お休(やす)みなのかしら?」
 声をかけたのは川相初音(かわいはつね)だ。彼女はつくねの顔を見つめて微笑(ほほえ)んだ。つくねは、いつものことなのだが、警戒心(けいかいしん)を隠(かく)すように慎重(しんちょう)に言葉(ことば)を選(えら)んだ。
「そんなこと、あたしには分からないわ」
「あら。あなた、しずくと仲良(なかよ)しじゃなかったの? いつも言ってたわよ。あなたのこと」
 そんなはずはない。つくねは心の中で思った。いくら能天気(のうてんき)なしずくでも、誰(だれ)にも話さないと約束(やくそく)したことを破(やぶ)るはずはない。つくねは、何だか胸騒(むなさわ)ぎを感じた。何か良くないことが、しずくの身(み)に起ころうとしている。それが何なのか――。
「ねえ、どうしたの? 顔色(かおいろ)悪いわよ。大丈夫(だいじょうぶ)?」
 初音はつくねの顔を覗(のぞ)き込んで言った。つくねは突然(とつぜん)立ち上がるとカバンをつかんで、
「あたし、何だか気分(きぶん)が悪(わる)くなっちゃった。保健室(ほけんしつ)へ行ってくるわ」
 つくねはそのまま教室を後にした。それを見送った初音は、意味深(いみしん)な笑(え)みを浮(う)かべた。
<つぶやき>やっぱり、しずくのことが心配(しんぱい)なんだよね。何事(なにごと)もなければいいんですが。
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