三人は、民宿(みんしゅく)をこっそり抜(ぬ)け出した。伊集院(いじゅういん)は民宿を出たところで、あたりをぐるっと見回した。――まあ、小さな外灯(がいとう)が点(つ)いているだけなので、誰(だれ)かいたとしても見つけることは難(むずか)しいのだが…。三人は足音(あしおと)を忍(しの)ばせて、その場を離(はな)れて行った。
どこをどう歩いたのか、林田(はやしだ)と久美子(くみこ)には分からなかった。先頭(せんとう)を行く伊集院を見失(みうしな)わないように必死(ひっし)について行くだけだ。どのくらい歩いただろう、急に伊集院が立ち止まった。伊集院の持つライトが、道(みち)をふさぐように横たわるロープを照(て)らし出した。そのロープには“立入禁止(たちいりきんし)”の札(ふだ)が下がっている。久美子が呟(つぶや)いた。
「ここって、民宿のおばちゃんが言ってた…」
「崖崩(がけくず)れで立入禁止になっている場所(ばしょ)だ。ここが一番あやしいのさ」
伊集院は背負(せお)っていたリュックをおろして、中から紙包(かみづつ)みを取り出して言った。
「さあ、腹(はら)ごしらえだ。夜明(よあ)けまでに、片(かた)づけなきゃならない」
紙包みの中にはおにぎりが入っていた。林田はおにぎりにかぶりつきながら、
「何だよそれ。宝(たから)探しなら、昼間のほうが見つけやすいだろ。それを…」
「それじゃだめなんだ」伊集院はおにぎりをつかむと、「俺(おれ)たちはずっと見張(みは)られている。この島に上陸(じょうりく)したときからな。気づかなかったか?」
<つぶやき>誰が何のために? この島には、何か特別(とくべつ)な秘密(ひみつ)があるのかもしれません。
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