三人は立入禁止(たちいりきんし)のロープをくぐり森(もり)の中へ入って行った。行くにつれて道がさらに細(ほそ)くなり、次第(しだい)に上り坂(ざか)になっていく。茂(しげ)みはどんどん深くなり、自分(じぶん)たちがどこにいるのかさえ分からなくなっていた。頼(たの)みの綱(つな)は、獣道(けものみち)のような細い道だけ。
三人は息(いき)を切らしながら歩き続けた。どのくらい歩いたろう。急に視界(しかい)が広がった。目の前に開けた場所(ばしょ)が現れたのだ。三人はホッと息をついた。空を見上げると、満天(まんてん)の星空(ほしぞら)に半月(はんげつ)が顔を出していた。月明かりで、目の前に小さな祠(ほこら)があるのが目に入った。
「ここか…」伊集院(いじゅういん)は小さく呟(つぶや)いて、祠の方へ歩き出した。
その時だ。久美子(くみこ)が急に悲鳴(ひめい)を上げて倒(たお)れ込む。彼女は震(ふる)えながらある方向を指(ゆび)さした。伊集院と林田(はやしだ)は、その方角(ほうがく)へ懐中(かいちゅう)電灯の明かりを向けた。――二人も一瞬(いっしゅん)息を呑(の)む。そこには…、木々の間に隠(かく)れるように、人の姿(すがた)があったからだ。
しばらくそれを見ていた林田が言った。
「何だよ、脅(おど)かすなよ。ありゃ、マネキンか何かだろ。悪(わる)ふざけにもほどがある」
林田はそう言うと、マネキンと覚(おぼ)しき方へ歩き出した。――近づくにつれて、林田の顔が曇(くも)りはじめた。広場の端(はし)まで来た時には、顔面蒼白(がんめんそうはく)になり転(ころ)げるように駆(か)け戻(もど)って来て叫(さけ)んだ。「ありゃ、し、死体(したい)だ! 人が縛(しば)られて…」
林田は急に口を押(お)さえて走り出し、近くの木の根元(ねもと)でぜいぜいと吐(は)いてしまった。
<つぶやき>宝物(たからもの)じゃなくて死体を発見(はっけん)するなんて…。これから、どうなっちゃうのかな。
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