みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0571「海賊島6」

2019-06-14 18:36:45 | ブログ短編

 久美子(くみこ)は布団(ふとん)に入るなり、直(す)ぐに眠(ねむ)りについた。無理(むり)もない。朝から島の中を歩き回ったのだ。疲(つか)れた身体(からだ)には、休息(きゅうそく)が必要(ひつよう)である。
 どのくらいたったろう。久美子は息苦(いきぐる)しさに、眠りから引き戻(もど)された。何かが身体の上に乗(の)っかっているような…。手で払(はら)いのけようとしてみるのだが、押(お)さえつけられているせいか、腕(うで)を動かすことができない。そのうち、口のあたりに何か冷(つめ)たいものが…。
 久美子は眠りから完全に覚(さ)めて目を開けた。まだ暗い部屋の中、目の前に黒い塊(かたまり)が動いていた。久美子は思わず叫(さけ)び声を上げようとしたが、口を押さえられていて声にならない。小さなライトの光が、久美子の目を眩(くら)ませた。久美子の心臓(しんぞう)は高鳴(たかな)り、身体をバタつかせる。たまりかねたのか、男の声が耳元(みみもと)でささやいた。「俺(おれ)だ。動くなよ、静(しず)かにしろ」
 どこかで聞き憶(おぼ)えのある声。ライトの光が男の顔を浮(う)かびあがらせた。そこにあったのは、不気味(ぶきみ)に照(て)らされた伊集院(いじゅういん)の顔。久美子はあやうく気を失(うしな)いそうになった。
「まったく、失礼(しつれい)な奴(やつ)だ。俺の顔が、そんなに恐(こわ)いのか?」
 伊集院は小声で言った。久美子はクスクス笑(わら)いながら、これも小声で、
「だって、仕方(しかた)ないじゃない。そっちが悪(わる)いのよ。あたしの部屋に忍(しの)び込(こ)むなんて――」
 伊集院は真顔(まがお)になって、「説明(せつめい)はあとだ。直ぐにここを出るぞ」
「えっ、まだ夜中(よなか)じゃない。こんな時間に出かけるなんて、信(しん)じられない」
<つぶやき>伊集院は何を考えているのでしょう。まさか、お宝(たから)のありかを見つけたとか?
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