みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0576「海賊島10」

2019-06-20 18:32:53 | ブログ短編

 どうやら、彼らがこの島に宝(たから)があると噂(うわさ)を広めた張本人(ちょうほんにん)のようだ。この島に観光客(かんこうきゃく)を集めようとしたのだが、思うようにはいかなかった。リーダーとおぼしき青年(せいねん)が言った。
「やっぱ宝探(さが)しだけじゃダメだったんだ。次(つぎ)の手を考(かんが)えないとな。それでだ――」
 リーダーは全員(ぜんいん)の顔を見渡(みわた)して、「いい考えがある。それは、アドベンチャーだ!」
 全員、キョトンとした顔をする。リーダーは笑(え)みを浮(う)かべて続けた。
「だから、本当(ほんとう)の海賊(かいぞく)がいるってことにするんだ。そうすれば…」
「この島に、海賊なんていないだろ。そもそも、海賊の宝なんてのも嘘(うそ)なんだから」
「そうだ。海賊がいるってことになったら、恐(こわ)がって観光客なんか来なくなるよ」
 みんなの反対(はんたい)をよそにリーダーはまくしたてる。「そこだよ。それこそがアドベンチャーだ! いいか。日常(にちじょう)では味(あじ)わえない冒険(ぼうけん)だよ。危険(きけん)を冒(おか)しても財宝(ざいほう)を手に入れたい。そういう、人間(にんげん)が持っている欲望(よくぼう)を駆(か)り立てるんだ」
「でも、宝なんでどこにもないだろ。何にも見つからなかったら、同じことじゃないか」
「それなんだ、失敗(しっぱい)の原因(げんいん)は。島を掘(ほ)り返せば宝が見つかるなんて、そんな安直(あんちょく)な考えでやって来る奴(やつ)らばっかりだったんだ。だからすぐに飽(あ)きられてしまった。今度は違(ちが)うぞ。そう簡単(かんたん)に掘らせはしない。海賊たちが邪魔(じゃま)をするからだ。いろんな所にトラップをしかけて、死(し)の恐怖(きょうふ)を味あわせてやる。フフフフフ……」
<つぶやき>手作り感満載(まんさい)のアトラクションでしょうか。でも、やり過(す)ぎると逆効果(ぎゃくこうか)かも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする