みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0566「海賊島2」

2019-06-09 18:14:00 | ブログ短編

 早朝、まだ陽(ひ)も昇(のぼ)っていないのに、林田(はやしだ)と久美子(くみこ)は伊集院(いじゅういん)に叩(たた)き起こされた。
「いつまで寝(ね)てるんだ! 俺(おれ)たちには時間が無いんだぞ。サッサと起きろ!」
 林田はともかく、久美子は突然(とつぜん)暗い部屋へ入って来た伊集院に毛布(もうふ)をめくられ、襲(おそ)われるのではないかと悲鳴(ひめい)をあげて、思わず叫(さけ)んだ。
「何すんのよ! レディーにこんなことするなんて。信じられない」
 伊集院は久美子の姿(すがた)を見て冷(ひや)ややかに呟(つぶや)いた。
「レディーねぇ…。すぐに出かけるぞ」
 伊集院が部屋から出て行くと、久美子は自分が下着(したぎ)姿なのに気づいてまた悲鳴をあげた。
 三人が訪(おとず)れたこの海賊(かいぞく)島は、一年ほど前に海賊の財宝(ざいほう)を探(さが)すのがブームになったとき注目(ちゅうもく)された島である。もともとは別の名前がついていた島なのだが、今ではその名を知っている人は地元(じもと)の人以外(いがい)はほとんどいない。
 そんな宝探しのブームも、去年(きょねん)のひと夏で終わってしまった。あれほど賑(にぎ)わっていたこの島も、今年の夏は訪(おとず)れる人は数えるほどだ。何軒(なんけん)もあった民宿(みんしゅく)も、彼らが泊(と)まっているこの一軒が細々(ほそぼそ)と営業(えいぎょう)しているだけだった。
 三人は、民宿のおばちゃんが作ってくれたお弁当(べんとう)を持って宿(やど)を出た。外はまだ薄暗い。先頭(せんとう)を行くのは伊集院で、あとの二人は眠い目をこすりながらフラフラとついて行く。
<つぶやき>本当に財宝が見つかるのでしょうか? 徒労(とろう)に終わってしまうんじゃない。
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