みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0580「しずく31~涼の素顔」

2019-06-24 18:31:29 | ブログ連載~しずく

 学校の裏手(うらて)には広い雑木林(ぞうきばやし)があった。学校の敷地内(しきちない)でゆくゆくは新しい校舎(こうしゃ)を建設(けんせつ)する予定(よてい)だったのだが、生徒数(せいとすう)が減(へ)り続けているので計画(けいかく)は棚上(たなあ)げ状態(じょうたい)になっている。
 水木涼(みずきりょう)は月島(つきしま)しずくの手を強く握(にぎ)りしめ、道(みち)のない所を枝(えだ)の間(あいだ)をすり抜(ぬ)けるようにして歩いていた。しずくは何度も声をかけたのだが、涼はまったく聞こうともしなかった。
 少し開(ひら)けた場所に出たとき、涼は急に立ち止まった。目の前には幹(みき)の太(ふと)い、枝ぶりのいい大木(たいぼく)が立っている。まるで、この林の主(ぬし)のような存在(そんざい)に思えた。
「さあ、ついたわよ」
 涼はしずくの手を離(はな)して言った。「すごい木でしょ。あなたにふさわしいと思って」
 しずくは、涼が何を言っているのか理解(りかい)できなかった。涼は大木の前まで行くと、
「どう、素敵(すてき)でしょ。私、あなたの友達(ともだち)だから…。あなたのために最高(さいこう)のステージを用意(ようい)してあげたのよ。気に入ってくれた?」
「なに? 何のことよ。涼、どうしちゃったの? 今日はなんか変(へん)よ」
 涼は楽しそうに声を上げて笑(わら)うと言った。「変じゃないわよ。これが本当(ほんとう)の私――」
 次の瞬間(しゅんかん)、涼の顔から表情(ひょうじょう)が消(き)えた。しゃべり方も冷(つめ)たい口調(くちょう)に変わり、
「知ってた? 私、あなたのこと大嫌(だいきら)いだったのよ。顔を見るのも嫌(いや)だったわ」
<つぶやき>親友(しんゆう)だと思っていたのに…。涼はどうしちゃったのでしょう。悪(わる)ふざけなの?
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