その日、三人は島のあちこちを歩き回った。民宿(みんしゅく)に帰り着いたのは陽(ひ)が落ちてからだ。林田(はやしだ)と久美子(くみこ)はへとへとになり玄関(げんかん)に倒(たお)れ込んだ。が、伊集院(いじゅういん)だけはニヤニヤしながら久美子が背負(せお)っていたリュックをもぎとると、自分の部屋(へや)へ行ってしまった。
「もう、いや。何であたしが、あの人の荷物まで持たなきゃいけないのよ」
久美子は泣(な)きそうな顔で言った。林田はそんな彼女を見て、
「仕方(しかた)ないだろ。俺(おれ)もお前も、タダでここまで来られたんだ。今は、あいつの言うとおりにしないとな。もし、お宝(たから)が見つかったら…」
「ばっかじゃない。そんなのあるわけないわ。まさか、あいつの言うこと信じてるの?」
「信じちゃいないけど…。でも、あいつの自信(じしん)ありげな顔を見てるとな」
夕食の時間になっても、伊集院は食堂(しょくどう)に顔を見せなかった。民宿に泊(と)まっているのはこの三人だけなので、おばちゃんは嫌(いや)な顔もせず、伊集院の部屋まで食事(しょくじ)を運んでくれた。
食事をしながらぽつりと林田が言った。
「お前、何でついて来たんだ? あいつとはどういう関係(かんけい)――」
久美子は少しあわてた感じで、「あたしは、海に来たかっただけよ。タダで連れてってやるって言われたから…。それだけよ。あたし、あの人とは友達(ともだち)でも何でもないから」
「分かんねえなぁ。友達でもないのに、こんなとこまで…。何かあったらどうするんだ」
「あたし、これでも腕力(わんりょく)には自信があるの。もし何かあったら、ぶっとばしてやるわ」
<つぶやき>この三人の関係ってどうなってるの? 伊集院って友達いなさそうじゃない。
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