みけの物語カフェ ブログ版

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0585「しずく32~イメージ」

2019-06-29 18:48:24 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは教室(きょうしつ)を飛び出すと、誰(だれ)にも悟(さと)られないように生徒(せいと)たちでざわついている廊下(ろうか)をすり抜(ぬ)けた。月島(つきしま)しずくが今どこにいるのか、つくねにもはっきりしたことは分からない。でも、彼女に危険(きけん)が迫(せま)っているという核心(かくしん)が、つくねにはあった。
 階段(かいだん)を駈(か)け降りて下駄箱(げたばこ)のところまで来ると、遅刻(ちこく)しそうで慌(あわ)てて駆け込んでくる数人の生徒に出くわした。つくねは彼らをやり過(す)ごすと、自分の靴(くつ)を持って――。
 このまま正門(せいもん)から出れば先生(せんせい)に見つかってしまう。学校から抜(ぬ)け出すためには…。この手のことは、つくねには容易(たやす)いことだった。この学校の間取(まど)りは、転校(てんこう)した時にすべて頭に入れてある。つくねは、何食(なにく)わぬ顔で職員室(しょくいんしつ)の前を通り過(す)ぎる。この時間、先生たちは授業(じゅぎょう)の準備(じゅんび)などで忙(いそが)しく、廊下を歩く生徒を気にするものは誰(だれ)もいない。
 つくねは誰にも見られないように、廊下の端(はし)にある美術室(びじゅつしつ)へ入って行った。ここの窓(まど)から外へ出れば、先生に見つかることなく学校の裏手(うらて)にある雑木林(ぞうきばやし)に抜(ぬ)けられる。つくねは美術室の窓(まど)を開けると外(そと)を見回した。誰もいないのを確認(かくにん)すると、持っていた靴(くつ)を外へ放(ほう)り投(な)げた。そして、窓の下に手をかけて飛び出ようとしたとき――。突然(とつぜん)、あの頭痛(ずつう)が始まった。つくねは窓の前で、うずくまってしまった。
 それは、一瞬(いっしゅん)のことだった。つくねの頭の中に浮(う)かんだイメージは、苦痛(くつう)でゆがんだしずくの顔――。つくねは思わず、しずくの名を呼(よ)んだ。
<つぶやき>しずくの身に、これから何が起こるのか…。つくねは彼女を助(たす)けることが…。
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