MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2307 女性だってジーンズのポケットにスマホを入れたい

2022年12月04日 | うんちく・小ネタ

 同じ値段なのに、なぜ女性のジャケットには胸ポケットと内ポケットがついていないのか…。「ユニクロ(UNIQLO)」が販売している「感動ジャケット」(のデザイン)に男女で差があることを訴えたツイートをきっかけに、「女性服のポケット問題」というものがSNS上で盛り上がっていたという話を、先日初めて耳にしました。

 仕事を持つ女性がこれだけ増えているにもかかわらず、男性服ほど機能的ではない女性服。7月29日に投稿されたこのツィートには、(8月10日時点で)2,700以上のリツイートと8,400以上の「いいね」が集まり、働く女性を中心に共感の輪が大きく広がったとされています。

 調べてみると、女性服のポケットの在り方が(ジェンダーの視点から)注目されているのは日本だけのことではなく、インスタグラムでは「#MeriPocket」というアカウントにおいて、ポケット問題が「フェミニスト・イシュー」として世界的に論じられているとのこと。

 米国の人気インスタグラマーheb(@hebontheweb)はこのアカウントにインスパイアされ、「私のジーンズにポケットをちょうだい。フェイクのものじゃ意味がない、実際にスマホを入れられるものがほしい」と歌う動画を公開し、70000を超える「いいね」を獲得したということです。

 因みに、男女別のポケットに様々な日用品が収まるかどうかを検証した結果、「iPhone X」の場合ほぼ100%の男性用ジーンズのポケットに収まる一方、女性用にデザインされたものでは40%しかポケットしか収めることができなかったとのこと。平均的な女性の手がポケットに収まる確率に至っては、(たった)10%にすぎなかったということです。

 そういえば、女性が日常的に小さなポーチを持ち歩いているのは、洋服(特にワンピースやスカートなど)にポケットが付いていないことが多いからだと(以前、家人から)聞いたことがありました。その背景には、「機能性よりもシルエットやデザインを重視」「素材が繊細でポケットをつけにくい」など様々な理由があるのでしょうが、実際に使う人でなければわからないこととはあるのだなと、改めて感じたところです。

 さて、そんなことを思い出していた折、11月13日の日本経済新聞が、米国のビジネスコラムニストのピリタ・クラーク氏による「女性の上着に内ポケットを」と題するフィナンシャル・タイムス紙の記事を掲載していたので、参考までにその一部を紹介しておきたいと思います。

 先日、とあるビジネス会議に出席した際、不運な男性が「愚問」を発する光景に出くわしたと、クラーク氏は記事の冒頭に記しています。彼は音響のスタッフで、登壇者にマイクのバッテリーパックを取り付けていた。彼は女性のパネリストに近づくと、彼女に「ジャケットに内ポケットはありますか?」と尋ねたということです。

 もちろん彼に非はない。それは、大半の男性のジャケットには内ポケットがあり、バッテリーパックが難なく収まるのが普通だから。しかし、女性のジャケットに内ポケットがあるかと聞くのは、「貴方は月へのチケットを持っていますか?」と尋ねるようなものだと、氏はこの記事に綴っています。

 理由はわからないが、ファッション業界は女性の上着に内ポケットを付けることに抵抗し、実用的なポケットが一切ない服を作りがちだと氏は話しています。これは世界のハンドバッグ市場にとっては朗報かもしれないが、多くの女性は(男性同様)必要なものを全てポケットに入れられるなら喜んで入れるだろうというのが(当事者でもある)氏の認識です。

 実際、ロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館の記録によると、女性の衣服には長い間、大きなポケットがあったと氏は言います。しかし19世紀に女性服のラインがほっそりすると、大きなポケットは廃れていった。

 もちろん現代でも、オーダーメードスーツなどには内ポケットを備えた服があるが、金持ちの女性向けのそうした服は最低550ポンド(9万2000円)もしてしまう。なぜ大衆向けのアパレル企業は内ポケットを自社のジャケットに付けられないのだろうかというのが、氏の指摘するところです。

 (世界的な)大手数社に問い合わせてみたところ、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)と英リースはノーコメント。「ZARA(ザラ)」は少なくとも2種類の「クラシック仕立て」のブレザーに内ポケットが付いていると答えたが、ジャケット全体に占める割合は教えてくれなかったと氏は記事に記しています。

 さて、確かに上着やズボンのどこかにスマホを入れておく場所やペンを刺しておく場所なければ、現場仕事はままなりません。鍵や財布や名刺入れも含めれば、ビジネスの必須アイテムはかなりのボリュームになるでしょう。

 ポケットがもっと平等な世界になれば、男性を含む誰もが満足できはずだと氏は言います。きわめて簡単な話なのに、そうした状況がなかなか実現しないのはなぜなのか。「私のスマホが(あなたのポケットに)入る?」という決まり文句なしに外出できる状況を思い浮かべてほしいとこの論考を結ぶクラーク氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。

 



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