11月24日の時事通信によれば、全国の国税局が今年6月までの1年間に実施した所得税の税務調査で、富裕層の申告漏れ所得が総額839億円と、2009年以降で過去最高となったことが分かったということです。
コロナ禍の下とはいえ、儲けている人は儲けているということでしょうか。結果、追徴税額も238億円に及び、前年の2倍超と大幅に増えたとされています。
国税庁によれば、富裕層に対する調査件数は2227件で前年比3.2%の伸びにとどまったものの、把握した所得の申告漏れ額は同72.3%増。特に海外投資をしている富裕層向け調査の影響が大きかったとしています。
中でも、申告漏れ額が最も大きかった業種は「経営コンサルタント」で、1件当たりの平均申告漏れ所得は2266万円。次いで、2150万円のシステムエンジニア、2136万円のブリーダーと続く一方で、過去10年にわたって上位に食い込んでいたキャバクラや風俗業は、今回は10位以内にすら入らなかったということです。
新型コロナによる自粛生活などのあおりを受け、風俗業などで働く人の所得が大幅に減少した一方で、在宅でできる仕事の収入や、ペット販売などが大きく伸びたことが影響しているということなのでしょう。コロナで泣いた人がいる一方で、(世の中には)人知れず笑っている人も多いことが伺われます。
もっとも、巨額の資産を元手にコンスタントに所得を重ねる本当の富裕層は、こうした場面に顔を出すはずもありません。日本の家計が保有する金融資産残高は今年の3月末時点で前年比2.4%増の2005兆円とされ、過去最高額を更新し続けているというデータもあるようです。
これは要するに、(やっぱり)「あるところにはある」ということ。それでは、いわゆる「富裕層」と呼ばれる人たちは実際、この日本にどのくらいいるものなのでしょうか。
11月22日の経済情報サイト「ファイナンシャルフィールド」に『「年収1000万円」は富裕層? 富裕層の定義とその割合を確認』と題する記事が掲載されていたので、参考までに紹介しておきたいと思います。
富裕層の一般的な定義は、「一定以上の購買力や経済力を有している世帯・個人」というもの。「層」といっている以上、資産やこの経済力・購買力を階層別に分類をした際の上位層を指していると記事はしています。そして、わが国では統計上より広義に捉えて細分化し、純金融資産5億円以上の「超富裕層」と純金融資産1億円以上の「富裕層」とに分類されることが多いということです。
ここでいう純金融資産保有額とは、預金額や株式・投資信託などの金融資産の合計から負債額を差し引いた額のこと。野村総合研究所のマーケット分析では、富裕層をさらに細かく分類し、保有額5億円以上の「超富裕層」、1億円以上5億円未満の「富裕層」、5000万円以上1億円未満の「準富裕層」、3000万円以上5000万円未満の「アッパーマス層」、3000万円未満の「マス層」に分け動向を追っているということです。
これによると、超富裕層と富裕層を合わせた世帯合計数は132万7000世帯で、全体のわずか2.4%。ここに準富裕層を合計しても474万5000世帯で全体の8.7%、準富裕層までを足し合わせても全体の10%以下にとどまると記事はしています。
アッパーマス層以上の合算では、1186万6100世帯で21.9%。ようやく全体の上位2割ということなので、4215万7000世帯におよぶ純金融資産3000万円未満のマス層が、全体の約8割を占めていることがわかるということです。
金融資産の状況は「やはりそんなものかな」という感じですが、それでは日々の生活の糧となる「年収」の状況はどうでしょう。サラリーマンにとっては一つの目標である「年収1000万円」は、果たして富裕層と呼ぶことができるのか?
一般に富裕層かどうかは純金融資産の保有額によって分類されることが多く、年ごとの動きが大きい(フローとしての)「年収」というくくりで判断することは難しいと記事はしています。
そうはいっても、年収別の割合で言えば1000万円以上の層は4.9%に過ぎない。「年収1000万円以上」というのは(日本の上位5%未満という希少性から見て)、かなりの上位層に位置することは間違いないというのが記事の認識です。
もちろん、例え年収が1000万円以上あったとしても、「富裕層」にカウントできないような世帯も多い。富裕層になるには純金融資産保有額1億円以上を目指さなくてはならないと記事はしています。
純金融資産保有額1億円以上となると、単純計算で年収の10倍が必要になる。つまり計算上、最低でも10年間は年収1000万円を維持しなくては到達できないことになります。
一方、額面年収1000万円の人の実際の手取り額はおよそ730万円となり、さらに日々の生活費等で収入全てを純金融資産に回せるはずがないので、年収が1000万円のままであれば随分と時間がかかるのではないかと記事は指摘しています。
また純金融資産保有額の計算上、負債額は金融資産の合計から差し引きされるので、例えば住宅ローンで8000万円の家を購入した場合は、その時点で残っている残債分が金融資産合計からマイナスされる。そう考えれば、年収1000万円でも、(自身の稼ぎだけでは)富裕層には容易に到達できないのが現実だというのが記事の見解です。
さて、結局のところ全世帯の2.4%に限られる「富裕層」とは、「資産を持った」家計のこと。あからさまに言ってしまえばこのご時世、(いわゆる「無産階級」に生まれ)「ゼロから始めた」サラリーマンには、なかなか手の届かないクラスなのだろうなと改めて思い知らされた気もします。
いずれにしても、給料をもらって生活費に充ててと、日銭を回しているだけではいつまでたっても富裕層には縁がないということ。富裕層を目指すと決めたからには、年収だけにとらわれることなく、投資信託や株式などで、いかに純金融資産保有額を増やすかに注力する必要がありそうだと結ばれた記事を、私も興味深く読んだところです。
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